自助論
2022年4月20日 CATEGORY - 代表ブログ
皆さん、こんにちは。
以前にご紹介した「商店街はなぜ滅びるのか」の記事において私は、「ビジネスの趨勢は『自助』の一点にかかっており、規制や保護といったものは長い目で見た時には、自らに有利に働くどころか、まるで『麻薬』のように自らを滅ぼす結果につながるという真理を見た気がしました。」と書きました。
「自助」という言葉を聞いた時、「自助論」という本の名前を思い浮かべる人が多いと思います。
これはイギリス人著述家サミュエル・スマイルズが、様々な分野において歴史に名を残した多くの著名人の人生を引用して、例外なく彼らの成功が「自助」の精神にあるということを明らかにしたものです。
しかし、このように知ったように本書の名前を引き出しましたが、お恥ずかしながら私はこの誰でも一度は耳にしたことのある名著を実際に読んだことがありませんでした。
そんなわけで、これを機会に読んでみることにしました。
本書を読んでその内容もさることながら「翻訳」の素晴らしさに驚かされました。
というのも、本書にはこのブログで以前にもご紹介した「翻訳本の読みにくさ」がほとんど感じられないのです。
ですが、この素晴らしい翻訳を行った人のお名前を確認して「なるほど」と納得しました。
そのお名前は「竹内均」、あの有名な科学雑誌「ニュートン」の編集長を長く務められた東大名誉教授です。
小学校時代、「昆虫大好き人間」だった私は、かなりの背伸びだったとは思いますが「昆虫」や「生物」がメインテーマの号に買ってもらったことを思い出しました。
そして、その内容についても、様々な分野において歴史に名を残した多くの著名人の人生と彼らの残した「言葉」を一気に吸収できる一冊となっており、その意味でまさに「恩書」となりえるものでした。
以下に、特に印象に残った著名人の言葉を引用します。
・イギリスの哲学者フランシス・ベーコン
「貧困や困難が人間を立ち上がらせる。自らの富を否定し、自らの力のみを信頼できる人間だけが、自分の水桶から水を飲み、自分のパンを食べる方法を学ぶ。つまり、生計を立てる道を習い、自分が善だと思うことを他人にも実践していけるようになるのだ。」
・ドイツの音楽家ルートヴィッヒ・ヴァン・ベートーベン
「(友人の『神の助けによってつつがなく演奏が終わりますように』という言葉に対して)神に頼るとは何たることだ。自らの力で自らを助けたまえ。」
・本書の日本語訳者 竹内均
「本書の序文にある『天は自ら助くる者を助く』という言い方には一種の論理的矛盾がある。論理的には矛盾であっても、それは常識的には真実である。スマイルズの頃に比べて現在(1985年)のイギリスの勢いがやや衰えたのは、イギリスの政治家たちが自助の心のない人を助けたからではないかとさえ、私は考える。(訳者のことば )」
この言葉を竹内先生が書かれてから40年近く経過した現在、この文章中の「イギリス」を「日本」と言い換えられてしまう状況になっています。
前述の「商店街」の件はもとより、いまだかつて「神への祈り」によっても「規制」や「保護」といったものによっても持続可能な「成功」が導き出されたケースは一つたりとも見つけることはできません。
私たちは歴史とその中の偉人の言葉にもっと謙虚に耳を傾けるべきです。