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ゲームチェンジの世界史

2026年3月18日 CATEGORY - 代表ブログ

皆さん、こんにちは。

前回の「レオナルド・ダ・ヴィンチ」の記事にて、カトリック教会というある種、世の中を意図的に「文盲化」し続けることでみずからの維持を図る組織によって、せっかくギリシア・ローマによって開かれたヨーロッパの文化的な繁栄が封印され、長らく続いた文化的な暗黒時代に終わりをもたらした「ルネッサンス」というゲームチェンジのドライバーと、その主要プレーヤーについて見ました。

本書によって、人類の歴史上で何度か引き起こされたこの「ゲームチェンジ」という現象自体に大きく好奇心を刺激され、より詳しくこの現象をウォッチしてみたくなりました。

そこで見けたのが本書「ゲームチェンジの世界史」です。

本書の著者は、なんと河合塾の世界史講師である神野正史氏で、さすが予備校の講師だけあって、一つ一つの説明が非常に軽妙かつ分かりやすく、面白いほどにページがどんどん進んでいきました。

そもそも、人類史における「ゲームチェンジ」をジェンガに例えて、

「初めにパーツを塔のように積み上げておき、参加者が一本ずつパーツを抜き取っていくジェンガというゲームがありますが、ゲームが進むごとに塔は不安定になっていき、ある臨界点に達すると塔全体が一気に崩れ落ちます。実は、これと同じことが歴史・社会・国家でも起こっています。ある時代に生まれた社会を構成する要素が互いに密接且つ複雑に絡み合いながら一つの安定した社会を紡ぎ出すことがあります。これがいわゆる『泰平の世』で、ジェンガで言えば、ゲームのはじまる前の最も安定した初期状態。しかし、世は常に移ろいゆくため、徐々に社会システムと現実が乖離していき、不安定化していきます。この状態がジェンガで言えば『ゲーム進行中』です。この進行中では塔は一見微動だにしていないように見えますが、一手進むごとに不安定さを増し、最後の一本が引き抜かれたとき、一気に倒壊します。このように、社会も現実との乖離が臨界点に達した時、一気に崩壊が始まるのです。」

というように説明されるところなど、冒頭から非常に興味を掻き立てられるものでした。

本書においては、人類史における16種のゲームチェンジャーについて説明されていましたが、その中でもっとも印象的であった「一神教」について以下要約引用します。

「現在、世界宗教人口が一番多いのが全体の39%を占めるキリスト教で、二番目が25%のイスラームですが、ともに一神教であり、これらを中心として世界の宗教人口の2/3が一神教を信仰しています。しかし、人類史における宗教は10万年にはじまりながらも、ほんの3300年前までは一つの例外もなく多神教だけでした。3300年前のエジプト王朝はアメンホテプ4世による治世で絶頂を迎えていましたが、唯一王である彼が逆らえなかったのが宗教(当時はもちろん多神教)を司る神官たちでした。そこでアメンホテプ4世は彼らの力を奪おうと、その神々とは別のアトンという神から啓示を受け(たとして)、アトン以外の神はすべて偽物であるとして、世界史上唯一の神を味方につけました。ただそう簡単には神官たちも民衆も納得せず、一過性のもので終わってしまいました。しかし、この時たまたまエジプトには放浪の民ユダヤ人がいました。彼らは各地を放浪しながら各地の宗教を自分たちの宗教に取り込む習性があり、その結果、彼らの宗教はシュメール・アッカド・アッシリア・イランなど、オリエント諸民族のツギハギ宗教(だからこそ旧約聖書は矛盾だらけ)となっていきます。もちろんこの時まではユダヤの宗教も多神教だったものが、ほんの一瞬のアメンホテプ4世の一神教に出会ってしまったことで、ユダヤ教が一神教に変質していくことになったのです。そして、そこからキリスト教ができ、イスラム教ができていくことになり、現在の状況につながっていきます。」

ここまでが、一神教が生まれたプロセスということになるわけですが、多神教優位の世の中から一神教優位の世の中に「ゲームチェンジ」したことが、人類にどのようなインパクトをもたらしたかということについて、以下その該当部分を引用します。

「そもそも多神教は『神はこの世界のありとあらゆるところに多数いらっしゃる』と考えるわけだから、遠い世界に住む異民族が聞きなれぬ神を信仰していたとしても、『ま、広い世の中、そういう神もいるかもね』と思うだけですし、似たような神がいればそれらを同一視したりすることも珍しくありません(以前に「外国人から見る日本人のグローバル力」の記事でその実態を見ました)。それに対して一神教では、神はこの宇宙の隅々までどこを探してもその神一柱しかいないのですから、異教の神は一つの例外もなく『邪神』、異教はことごとく『邪教』ということになります。したがって邪教との妥協などありえず、その信者どもなど、無慈悲・残忍・冷酷に殺せば殺すほど全能の神はお悦びになる、という理屈になります。事実、聖書を紐解けば、神が異教徒に対して『無慈悲・残忍・冷酷に殺戮の限りを尽くすよう命じる』シーンが随所に見られます。彼らが『隣人を愛せ』というとき、その『隣人』とは信者同士を指す言葉であって、異教徒には適用されず、異教徒に対しては、『同調してはならない。憐みの目を向けてはならない。同情してはならない』と命じています(以前に「旧約聖書を知っていますか」の記事にて確認済み。)。こうして、『他宗教・他の価値観など一切を認めない』という信仰様式がここに生まれ、その遺伝子は数千年の時をかけてキリスト教、イスラームへと伝えられ、それは文化・民族性をも変質させながら世界を席巻していくことになったのでした。」

2026年3月18日現在、今世界で起こっている不幸な出来事の原因はかなりの部分、この3300年前がきっかけとなったゲームチェンジに因っていると実感をもって理解できる気がします。