
起業家の勇気
2025年10月26日 CATEGORY - 代表ブログ

皆さん、こんにちは。
私は大学時代ほとんど就職活動というものをしませんでしたが、かろうじて就活セミナー的なものに一つだけ顔を出したことがあります。
それが、当時ベンチャーブームの最先端を走っていた「インテリジェンス(現パーソナルキャリア)」という人材サービス会社が主宰でありながら、その社長である宇野康秀社長が、「ベンチャー立ち上げという選択肢もある」ということを力説するという今考えると不思議な「就活セミナー」でした。
その中で、インテリジェンス出身で「インターネット専業の広告代理店」という新しい業態にチャレンジしている若者に宇野氏がその開業資金を援助しており、「いつまでも会社員を続けることに満足している場合ではないぞ!」と社員たちにハッパをかけていると私たち参加者に熱く語ってくれました。
その若者が実はこのブログでも何度もご紹介しているサイバーエージェントの藤田晋社長でした。
藤田社長は今では死語になりつつある「ヒルズ族」として名を馳せたわけですが、その藤田社長らヒルズ族の「兄貴分」である宇野社長(ただ実際には宇野社長は会社も自宅も一度も六本木ヒルズにおいたことはないとのこと)について今まであまり触れたことがなかったことに突然気づき、彼の半生が書かれた「起業家の勇気」を遅ればせながら読んでみることにしました。
読後の感想を述べる前に、ざっと宇野社長の経営者としての歴史を概観します。
「大阪有線という会社を一代で800億円企業にまでなした父の後は『絶対に継がない』と当初から決めていた宇野氏(父の会社は継がずとも実業家になることを目標にしていた)は、大学在学中からリクルートにアルバイトとして入り込み、優秀な営業成績をたたき出すも、リクルート本体ではなく不動産関連子会社であるリクルートコスモス社(リクルートについては以前の記事を参照)に入社するが、まもなくリクルートの仲間とともに、独立しインテリジェンスを創業する。持ち前の営業力であっという間に会社を大きくし、上場が目前となったタイミングで、父が末期のがんに侵され、病床にて大阪有線を引き継ぐことを懇願される。この時、大阪有線は会社の規模は大きいながらも、有線事業に不可欠なケーブルをNTTや電力会社の電柱に違法で敷設するというコンプライアンスの問題や何百億円という債務を抱える危機的な状況だった。父のような豪放磊落さを嫌悪し、当初から継がないと宣言していた上に、自らのインテリジェンスが上場目前というタイミングというありえない状況にもかかわらず、最終的に継ぐことを決心し、大阪有線の社長となることを決断する。まさに火中の栗を拾うが如く、電柱の不法利用の担当官庁である郵政省にみずから業務改善を直訴し、実態を報告しつつ、遡及的な使用料支払いおよび新たな契約の締結にかかる500億円もの追加負担と、自社の社員からの過酷な追加労務に対する反発に誠意をもって対応し、正常化にこぎつけ、インテリジェンスを有線(USEN)の子会社化。その後、リーマンショックによってUSEN・インテリジェンス両社とも大きな損失を出したことから、銀行に債務の一括返済を求められる。その結果、インテリジェンスをはじめとする多くの事業を泣く泣く売却することを決断。それでも債権者らの突き上げは続き、遂にUSENの社長を退任する。その上で、個人でU-NEXTを有線から分割して設立し、かつての社員およそ300人を引き連れて、「映像配信サービス」を始め、4年後の2014年に東証マザーズに上場を果たす。2017年にU-NEXTはUSENをTOBし経営を統合、銀行管理状態にあった父が創業した会社を完全に取り戻す。」
本書を読んでしみじみ思ったことがあります。
それは宇野社長の経営者人生を概観すれば、「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし(勝つ時には偶然の勝はあり得るけれども、負ける時には必然な負けしかない)」という言葉は本当にその通りだと思わざるを得なということでした。
私たちは様々なベンチャー企業の成功と失敗を結果として目にします。
「成功」の中には当然ですが、その時の運であったり、勢いであったりに恵まれての「不思議の勝ち」が存在しているはずで、どれが「不思議の勝ち」でどれが「必然の勝ち」なのか、その経営者が勝っているときに見ている側が判断することは非常に難しい。
そして、「負け」には「必然の負け」しかあり得ないとすれば、経営者としてなすべきことは、その「必然の負け」に向き合って、それを乗り越えて「必然の勝ち」につなげることしかないのだと。
となれば、その「必然の勝ち」は圧倒的に「不思議の勝ち」よりも希少であることは間違いなく、このパターン以外に私たちが学ぶことができることはないのかもしれません。
なぜ宇野社長はつなげることができたのか。そのことは次のような彼の発言から推察することができるような気がしました。
まずは、継がないと言っていた父の会社を継ぐと決めた時の発言。
「(インテリジェンスの社員たちに頭を下げながら)父の残した後始末を誰かがしないといけない。そう考えると身内である自分がその責任を取るべきだと、、、、。だから、僕はあの会社を引き継ごうと思っているんだ。上場を目前にして本当に申し訳ない。」
そして、本書の著者になぜつらいことを進んで選ぶのですかと聞かれたときの発言。
「別にマゾってわけじゃないんですが、そういう苦難というか、苦しさというか、そうしたところに身を置いたときに生まれる、研ぎ澄まされた感じっているのが好きだっているのは、ありますね。」
本書を読む限り、宇野社長は間違いなくその希少な「必然の勝ち」の経営者であると思いました。









