
憤怒の英語道 #273
2022年5月20日 CATEGORY - おすすめ書籍紹介
【書籍名】 憤怒の英語道
【著者】 松本 道弘
【出版社】 さくら舎
【価格】 ¥1,600 + 税
【購入】 こちら
#107「英語と私」#108「英語で考える本」の著者である松本亨氏が東(東京)の松本、対する西(大阪)の松本として英語教育界の重鎮とされたのが本書の著者である松本道弘氏です。
2022年3月14日に逝去され、結果として本書が「遺書」のようになってしまいました。
著者は関西学院大学を卒業後、当時十大商社の一つとされた日商岩井勤務を経て、駐日米国大使館の同時通訳者やラジオ英会話の講師、そして名古屋外国語大学、ホノルル大学の教授をもつとめられました。
また、その傍ら1986年から英語と異文化交流を学ぶ私塾「弘道館(のちに紘道館に改称)」を主宰しながら、2021年に会員制オンライン・サロン「松本道弘オンライン・アカデミア」を開校したばかりでの急逝でした。
その教育姿勢は一貫して「使える英語の追求」であり、またそのために筆記試験はなく内容や表現力、意思伝達力など実践的な英語のコミュニケーション能力を実技試験にて測定する「ICEE(Inter-cultural English Exchange)コミュニケーション検定」の創設をされたということで、私たちの「国内留学」や「SECTテスト」の理念と近いものがあるのではないかと思い、遅ればせながらではありますが読ませていただきました。
本書を読んで真っ先に感じることは、著者の「英語」に対する考え方が、タイトルの通り「道(どう)」であるということです。
彼の人生はまさに英語にすべてを懸けたものであったことが最初の数ページを読んだだけで伝わってくるそんな「自伝」になっていました。
(本書の中で自ら「狂人」と自認している通り、正直その自分自身と英語のみに集中するその浮世離れした様にかなり圧倒され、何度か途中で本を閉じそうになったくらいです。)
著者は「英語道の鬼」そのものであり、上記のように「私と著者の理念が近いのではないか」などと言おうものなら、間違いなく著者の「憤怒の念」を買ってしまうことでしょう。(笑)
その点では、私の英語に対する理念は所詮は著者が言うところの「術」どまりであり、彼の「道」には遠く及ばないと断言せざるを得ません。
ただ、やはり私にとっての英語観は、「そもそも日本人にとってはどこまで行っても『ツール』に過ぎない」というものが前提にあり、「たかが英語」の範囲内で「使える英語の追求」の最適解を導くものであると思っています。
それでも、本書からひしひしと伝わってくる著者の英語観である「されど英語」の境地にただただ圧倒され、「畏敬」を抱く以外何もできないというのが正直な感想でした。
心からの哀悼の意を表したいと思います。