私たちはいかにして英語を失うか #223
2019年8月18日 CATEGORY - おすすめ書籍紹介
【書籍名】 私たちはいかにして英語を失うか
【著者】 服部 孝彦
【出版社】 アルク
【価格】 ¥1,600 + 税
【購入】 こちら
私は、日本人が「英語を学ぶ」ための「根本的な」目的は大きく分けて二つあると思っています。
まず、英語ができない状態から英語をできるようにするためというのが一つ。
そしてもう一つは、一度英語ができる状態になった後、その状態を維持するためというものです。
私は、前者を「つくる」英語学習で、後者を「まもる」英語学習と定義して、それぞれ別個の学習であると認識しています。
そして、そのうちどちらがより「大変」かといえば、圧倒的に後者の「まもる」英語学習だと感じています。
というのも、(特に大人の方の場合)前者の「つくる」英語学習は、英語を身に付けなければならない何かしらの大きな「必要性」を感じ、それが短期間で目的を達成するモチベーションとなりやすいからです。
それに対して、後者の「まもる」英語学習は、一度英語ができる状態を実現した人にとっては、エンドレスの目標となり、しかも大きな「必要性」がすでに存在しなくなった状況でも、そのモチベーションを維持し続ける必要が生じるからです。
しかも、日本人の通常の生活においては「英語環境」が存在しない中でのマラソンというわけですから、圧倒的に難しい状況になります。
そのため、多くの日本人の英語学習の日本人全体の累計学習時間に着目すれば、後者への取り組みに悩むことのほうが圧倒的に多くなるのは当然です。
私を含め、ほぼすべての英語を一旦習得した日本人、そして、現在前者の目的で英語学習に励んでいる人にとっても、必ずその目的を達成した後、避けることはできない目的なのです。
そして、その「大変さ」を最も明確に感じてしまうのが、「帰国子女」なのです。
本書は、彼ら、そして彼らの親が、抱えるこの問題について詳述する中で、その問題の解決にいかに近づくかについて論じた非常に貴重な一冊となっています。
文責:代表 秋山昌広