日本人の英語のぎこちなさの源泉
2022年11月23日 CATEGORY - 日本人と英語
書籍紹介ブログにてご紹介した「英語独習法」からテーマをいただいて書いていきますが、第三回目のテーマは「言語のスキーマの違い」です。
突然「スキーマ」という専門用語を持ち込まれても困ってしまいますよね。
実は、私も本書において初めて知った用語ですが、この「スキーマ」という言葉は、日本人と英語というか、外国語を学ぶものであればだれもが経験する「困難」の源泉を説明する非常に重要が概念だということが分かりました。
まずは本書よりこのスキーマの定義を要約引用します。
「スキーマとはある事柄についての枠組みとなる知識、すなわち『知識のシステム』だ。言語情報は全てスキーマのフィルターを通して知覚されることになる。しかし、母語についてのスキーマは、ほとんどが意識されず、言語を使う時に勝手にアクセスし、使ってしまうというもの。母語話者が外国人がその言葉を使うのを聞けば、すぐにヘンだと分かる。しかし自分でもなぜそれがヘンだと思うのか分からない。つまり、その知識のシステムは言語化がほとんどできない。できるのはほんの氷山の一角で、自転車の乗り方を言葉で教えることの成果がほぼ絶望的に限定されてしまうのと同じだ。」
つまり、日本人は日本語のスキーマ、英語圏の人は英語のスキーマに勝手にアクセスして話しているため、日本人が英語を話そうとするとどうしても日本語のスキーマに影響を受けてしまい、その結果ぎこちなくなってしまうということのようです。
その典型的な事例を本書から以下引用します。
「日本語の『人がふらふらしながらドアへ歩いていき、部屋に入った』という内容を日本人が英語にしたいと思えば、
A man walked to the door and entered the room with unsteady steps.
のように直訳したくなる。しかし、このような文を作る英語母語話者はほとんどいないだろう。
A man wobbled into the room.
のように言うのが普通だ。そもそも日本語では動作の様態の情報は動詞の中には入らない。様態は必要なら副詞(特に擬態語)で表現される。対して英語ではwobbleのように、ある特定の様態が動詞としてあらわされることが非常に多い。英語は動作の様態の情報を個別の動詞だけで表現するのだ。」
実はこれ、少し前に記事にした「日本語と英語のオノマトペを概観する」で確認したことの完全なる裏返しであることに気づきました。
つまり、日本語は「一般的な動詞と擬態語(オノマトペ)を含む動詞以外の修飾語の組み合わせでのバリエーション」というスキーマであり、英語は「様態まで含んだ情報を入れ込んだ個別の動詞のバリエーション」というスキーマという違いがあるということです。
そのようなスキーマの違いがあるのにもかかわらず、母語である日本語スキーマを知らず知らずの間に英語でのコミュニケーションにも当てはめてしまうことによって、その運用に大きな支障が生じることになるというわけです。
まさに日本人の英語のぎこちなさの源泉を見た思いがしました。
しかもそのスキーマは冒頭画像のように海面下に隠れている部分の方が圧倒的に大きいため、それを克服するためには非常に大きな努力が必要になります。
そもそも「英語の達人」を目指すならば、学習開始前にそのような厳しい現実を知っておくべきだというのが、著者の本書における最大のメッセージのように思えます。