日本人と英語

抽象名詞の可算・不可算について

2022年11月23日 CATEGORY - 日本人と英語

書籍紹介ブログにてご紹介した「英語独習法」からテーマをいただいて書いていきますが、第二回目のテーマは「抽象名詞の可算・不可算」です。

私が主宰する「文法講座」においては、講座開始直後に「名詞」における「可算・不可算」の区別について学習します。

まず、英語の名詞は基本的にはそれらの性質によって以下の5つに分けられます。

①普通名詞(実体と形があるもの)、②物質名詞(実体はあるけど形がないもの)、③固有名詞(人や物についた固有の名称)、④集合名詞(人や物の集合をあらわすもの)、⑤抽象名詞(概念や考え方をあらわすもの)

そして、上記の「それらの性質」とは別の次元で、それらを2つに分類します。

その次元とは「可算(数えられる)名詞か不可算(数えられない)名詞か」という観点ですが、これについてはすでに「可算か不可算かは物の見方次第」の記事で解説済みですが、改めて私の講座での解説を簡単に紹介します。

「その名詞をナタのようなもので、パカーンと二つに割ったとして、その二つに分かれたものが、もともとの物と同じ性質を持っているならば、『不可算』、壊れてしまってもはやその性質を維持していないなら『可算』です。」

では、この考え方に則って第一の分類の5つの名詞を分類してみましょう。

①「普通名詞」には実体もあって一定の形もあるわけですから、ナタで切ったら壊れるもしくは死んでしまうため、すべて「可算」となります。

②「物質名詞」には実体はあるけど形がない、すなわち変形可能の水や空気など素材的なものなので、ナタで切っても切ってもその物質のサイズが小さくなるだけだからすべて「不可算」。

③「固有名詞」は人や物についた固有の名称ですから、本来的には普通名詞と一緒でナタで切ったら壊れるか死ぬかですので一見、「可算」かと思いきや、そもそもそれが一つしかないから「固有」なわけで数える必要がないという意味で「不可算」。

④「集合名詞」は少し馴染みが薄いと思いますが、例えば「family」や「staff」のように人や物の集合体をあらわしますが、集合体そのものだけでなくそのメンバーも表します。そして、「集合体」の場合は基本的に切って半分にしたり何分の一かにしたりできるので「不可算」、「メンバー」の場合はやはり切ったら死んでしまいますので「可算」(ただし複数形のsはつきません)となります。

*ただし、集合名詞には上記のような「family型」以外にも「furniture型(集合体しかないので全て不可算)」「people型(メンバーの複数形しかないので全て可算)」

⑤「抽象名詞」ですが、概念や考え方をあらわすものですので、これにはそもそも実体がない、だから切っても切ってもそもそも壊れるもの自体がないわけで、当たり前のように「不可算」という理解ができる「はず」です。

できる「はず」なのに、本書において著者は「抽象名詞の可算・不可算」というテーマ設定で考察をしているではありませんか。

以下、該当部分を引用します。

「抽象名詞は特に難しい。日本語的な感覚からは抽象名詞が指すものは目に見えないものだから全て不可算のように思えてしまう。しかし実際には、ideaのようにほぼいつも可算名詞と考えてよいものもあれば、evidenceのようにほぼいつも不可算の名詞もある。しかも、多くの抽象名詞は可算・不可算両方が可能である。大抵の辞書は、【U;C】などと簡単に両方ありの記述があるのみだ。このように書いてあると学習者は『どっちでもいいのね』と思いがちだがそうではない。これは文脈によってどちらの用法もありうる、ということを示しているのであり、可算・不可算のどちらが良いかは、いま書こうとしている文脈でのその名詞の意味によって決まる。私自身、抽象名詞の可算・不可算の使い方は、英語論文を書くとき、最も自信が持てないところだ。」

なんとも、不完全燃焼感の強い結末を迎えてしまいましたが、今井先生でさえそういうことなら、ここは素直に諦めようと思います。