日本人と英語

国際コミュニケーションとジョーク

2015年4月26日 CATEGORY - 日本人と英語

ブッシュ

 

 

 

 

 

 

以前にご紹介した國弘正雄氏と並んで同時通訳の神様ともいうべき村松増美氏の書かれた「だから英語は面白い」の中に、「国際コミュニケーションとジョーク」について非常に興味深い部分がありましたのでこの記事ではその部分をご紹介したいと思います。

まず、本書の中であげられているジョークに対する反応の国民性による違いを描いた面白いジョークをご紹介します。

・フランス人は、半分聞いただけで笑う。(賢くてすぐに落ちが分かってしまうから、もしくは不躾だからという説もあります。)

・イギリス人は最後まで聞いてから笑う。(礼儀正しいから、もしくは頭が固いからという説があります。)

・ドイツ人は翌日の朝になってから笑う。(一晩中理詰めでなぜ面白いのか考えるからという説があります。)

・日本人は、理解できずにただ、ニヤニヤする。(お付き合いで笑うが、さっぱり理解できていない)

・アメリカ人は笑わない。(あらゆるジョークを知っているからその手のジョークはもう古い、もっと良いのを知っている)

言わずもがな、このジョークはアメリカ人が作ったものです。日本人が特にバカにされているような感じを受けますが、私の経験上も残念ながら、反応としてはかなり正解に近いように感じます。

しかし、本書ではその点について日本人が彼らのジョークを理解できないのはある意味仕方がないことなのだということをしっかり理解しておけば、さっぱり理解できていないにもかかわらず、お付き合いでニヤニヤする必要もなくなると言っています。

このことは、著者の「国際コミュニケーションとジョーク」に関する認識は上述記事にても引用しましたが以下の言葉に集約されていると思います。

「国際会議なので、英語のジョークが分からないからと言って、日本人特有のニヤニヤ笑いで、相手のご機嫌を取る必要など全くありません。理解できなければ堂々と理解できないことを伝えればいいのです。そもそも、国際会議のような異なる文化の人たちとの対話の場で、自分たちの文化の中でしか通用しないようなジョークを使うこと自体が相手への配慮を欠く行為と言えます。」

例えば、冒頭の画像は風刺漫画ですが、これもその背景にある出来事を知らなければジョークとして全く成立しません。

これは、2008年12月14日、イラクを電撃訪問したブッシュ大統領は、イラクのマリキ首相との共同記者会見中にイラク人記者から靴を投げつけられたことに対するジョークです。

この事件で、ブッシュ大統領は投げられた靴をうまくかわしてみせましたが、落ち着き払って靴を払い落とそうと手を広げたマリキ首相の態度に比較すると、ブッシュ大統領のとっさの対応はずる賢い小心者にしか見えないという印象を作り出してしまったという事実を前提にこの風刺漫画が描かれています。(その様子は以下のビデオでどうぞ。)

西洋人はそれぞれ言葉は異なっても、西洋人として各国の文化も日本と比べれば共通の部分が多いと思います。また、それに伴って時事的なニュースも共有する機会が多いでしょう。ですから、日本人が彼らと比較してジョークが本来的に苦手なのだと言う理解は必ずしも正しくないと思います。

私は2008年当時、このニュースを国内で目にしましたが、最近になってこの風刺画を見てもすぐに意味が分かりませんでした。ですから、同じ文化圏、生活圏にいたとしてもすでに何年もたっておりすっかり忘れてしまっている場合もあります。その場合も、もちろんジョークは当然理解できないでしょう。

つまり、タイムリーな事実の理解の前提がなければ、この靴が会場の外に締め出されている風刺画のジョークなど理解できるわけもないのです。ですから、日本人が理解しないのは、彼らの文化背景とリンクしにくいだけであって、自分たちの文化背景に即したジョークでは彼らよりも当然に上だということを理解させる必要があります。

その一つの例として著者の非常にパンチの効いた日本人としての最上級のジョークをあげておきます。

「日本人が(西洋人の)ジョークを理解せずニコニコしているのは、そのジョークを会社へ持ち帰り、稟議にかけて、笑うべきかどうかを決めるのです。」

稟議というものが何かが分からない西洋人は、ポカーンとするしかないでしょう。(笑)

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