英語の壁 #20
2014年5月10日 CATEGORY - おすすめ書籍紹介
【書籍名】 英語の壁
【著者】 マーク・ピーターセン
【出版社】 文藝春秋
【価格】 ¥700+税
【購入】 こちら
この本は実は長い間、積読(つんどく)状態になっていたものを遂に読了したものです。
私の本棚には積読状態の本がかなりたくさんあります。そして、そのほとんどが「翻訳」本です。
私は、翻訳本を読むのが本当に苦手です。どんなに素晴らしい翻訳家の方の翻訳だとしても、日本人が書いた日本語の文章に比べ、どうしても、流れがしっくりこないのです。
ですから、途中で読むのをやめてしまう率が非常に高いです。それもあって、読み始めるまでに至らない本がたくさん積み重なるということになるのです。
この本はマーク教授が自ら日本語で書いた本なので翻訳本ではないですのですが、日本人でない方が書かれた本だということで、積読してしまったという次第でした。
しかし、今回思い立ちまして読了することができました。
実際に読んで見ますと、あの翻訳文に見られるしっくりこない感覚、つまり「違和感」といいましょうか、そういったものがほとんどないのに驚かされました。
それどころか、日本人ではない方が日本語に対峙するからこそ感じる日本語の本質といえるようなものを、何とも分かりやすく客観的に説明されていることに衝撃を受けたのでした。
彼にとっての「日本語の壁」というものを様々なエピソードとともに分かりやすく説明してくれています。
これらの「言語の壁」は、言語は一対一の対応ではありえないという事実から生じます。そして、その事実は言語というものが壮大な文化背景を前提に存在していることの証明でもあります。
つまり、「日本語の壁」をしっくり説明できるマーク教授は「日本語の壁」を超えているということだと思うのです。
私はいつも正直にいろいろなところで告白していますが、英語に携わることを生業にしている割に映画を字幕なしで理解できたためしがありません。
それは、言語の字面の問題ではなく、文化背景の違いだということなんだと思っています。
言語をグローバルコミュニケーションツールとしてとらえる範囲では、仕方のないことなのだと思って、ずっと前から諦めているのです。
つまり、私は全く「英語の壁」超えることはできていないということです。
実は、英語をグローバルコミュニケーションツールとして学ぶ場合には、この諦めは非常に大切なことだと思います。
マーク教授が「日本語の壁」を乗り越えるために必要だった(ご本人はまだまだだと思ってらっしゃるようですが)時間と努力をこの本を読むとよくわかります。そして、そのような努力を普通の人ができるかといわれれば絶対にできないと思うのです。
日本に身を埋め、長期的にこの地を生活の場と定める覚悟があるものだけがなしうる努力であることが分かります。
ですから、今回この本を読んで、それを自分ではできないという諦めがさらによくついたといえるかもしれません。
そして、逆にこのことが、英語をグローバルコミュニケーションツールという「壁」の(ずっと)手前にある目標に適切に定めることに素直に向かうことにつながるのではないかとも思ったのです。
ほとんどの日本人にとって必要な英語とは、どのような(レベルの)ものなのか。
それは、「英語の壁」という遥かなる次元にあるものとは関係のない、自ら自身が必要に応じて決めるべきものであるということをしっかり考えるべきかと、この本を読んで逆説的ではありますが感じました。
文責:代表 秋山昌広