なぜ教材は難しすぎてはいけないのか
2022年9月7日 CATEGORY - 日本人と英語
書籍紹介ブログにてご紹介した「英語学習2.0」からテーマをいただいて書いていますが、第三回目のテーマは「使用教材のレベル」についてです。
私はこのサイトにおいて「映画活用専門英語学習法」というページを提供していますが、映画の活用はあくまでも「使える」以上に英語の専門性を高める必要がある、そのまた余裕がある方に対してであり、一般的に「使える英語」を身に着ける方法として映画を教材に用いることを推奨していません。
それは「目標設定の観点から好ましくない」というのが理由ですが、本書においてもその件について全く同様に指摘があり、またその内容が非常に分かりやすかったので、以下に該当部分を引用します。
「ビジネスパーソンで英語を勉強している人の中には『The New York Times』や『The Economist』といった海外の新聞や雑誌を読んでいる方も少なくないと思いますが、これはあまり推奨できません。なぜならそれらの方の多くが『目的思考ができていない』と言わざるを得ないからです。英語の文章を読むことの一番の目的は『英語脳』を作ることです。『英語脳』とは、『英語を左から右に順番に理解していく』ということを意味します。それができていないと英語の文章を読むスピードは相当遅くなりますし、通常のスピードで話される英語をリスニングして理解することは極めて難しいのです。『多読』は『英語脳』を作る目的で英語の文章を読むトレーニングですが、そのポイントは①『辞書を使わない』②『後ろから訳さない』の二つです。実は、リーディングもリスニングも情報を受け取ってその意味を理解するという点で共通するプロセスです。両者はその情報が文字情報なのか音声情報なのかの違いでしかありません。英語脳を作るというのは『意味理解の力を高める』ということです。リスニングでは非常に分かりやすいのですが、『辞書を使わない』というのは非常に大事です。そもそもリスニングをしている時には調べることは不可能です。そこで知らない単語が出てきた場合、その意味を想像しなければなりません。つまり、文脈から推測する力を鍛えることができるのです。そして二つ目の『後ろから訳さない』ですが、これもリスニングと同じ状況を作り出すことが目的です。この二つのポイントが守られると、多読というリーディングのトレーニングをしながらも意味理解の力が強化され、リスニング力の向上につながるのです。しかしながら、『The New York Times』や『The Economist』ではあまりに単語のレベルと文章の構造が難しすぎて、意味理解の力を高めることにつながらないのです。多読の教材選びのポイントは分からない単語が少ない題材を選ぶことです。(単語に関しては前回のような理論に基づき、それに特化した学習をすべき)その意味で言えば、『洋画や海外ドラマを見る』という学習法も同様です。私の感覚では、TOEIC800に満たない人が映画を観て学習するのは、かなり非効率な学習法だと言わざるを得ません。」
何度も言いますが、著者の目的と効果性をとことんまで突き詰める姿勢は本当に参考になります。