なぜ時・条件の副詞節では現在形なのか
2022年11月11日 CATEGORY - 日本人と英語
書籍紹介ブログにてご紹介した「ヘミングウェイで学ぶ英文法」からテーマをいただいて書いていますが、第五回目のテーマは「時・条件を表す副詞節」についてです。
私は自ら主宰する「文法講座」においては「なぜそうなるのか」という「理屈」をなによりも重要視しているとお伝えしてきました。
ですから、基本的にはどんな質問を受けたとしてもきちんとした理屈を明示して解説できる自信をもってやっているのですが、それでも時々、自分自身が100%納得できる理屈をつけることができずに躊躇しながらの解説になることはあります。
その典型例が、従属副詞節を作る接続詞に関して、時・条件を表す接続詞が作る副詞節が「意味的には未来なのにもかかわらず現在とする」というルールに関する理屈です。
この項目に関する質問をいただく度に、解説書やネットを駆使して調べるのですが、どうもしっくりくるような解説に出合うことができず、「時・条件を表すということはこれから起こることであり、未来のことであるのは自明のことであるから」という理屈を「勝手に」作って凌いできました。
しかし、本書にはこの項目に正面から対峙したかなり詳細な解説がありましたので以下に引用します。
「時や条件(when, till, after, as soon as)を表す接続詞から始まる副詞節で表す出来事は明らかに未来に起こることですが、After I finish my homework, I will go out.のようにwill をつけずに現在形で表すというルールはよく知られています。このルールについて少しだけ説明をさせてください。実は、古い時代の英語には、未来の事柄も現在形で表していました。当時は、現在形と過去形、仮定法過去の形しかなかったのですが、現在形で書かれていても、時を表す副詞や文脈などで、未来のことか、そうでないのかを区別していたのです。(上記の現代のルールに関して)時の副詞節も『・・・した後で』というような未来を表すような意味も備えており、その中の動詞は現在形となっていることから、これがそのころの名残だと分かります。つまり、時や条件を表す副詞節は、接続詞自体が未来志向なものであるため、その節の中の動詞は現在形にするという、古い英語の規則に従っているということです。」
ということは、私が勝手に作った「時・条件を表すということはこれから起こることであり、未来のことであるのは自明のことであるから」という理屈はあたらずとも遠からずといったところでしょうか。
とは言え、このようなしっかりとした歴史的事実をふまえた上でこの理屈を提示することで、同じような解説をするにしても明らかに説得力に違いが出るはずですので本当にありがたいことです。