続・英語との付き合い方
2023年3月12日 CATEGORY - 日本人と英語
書籍紹介ブログにてご紹介した「英語と日本人」からテーマをいただいて書きていますが、第五回目のテーマは「英語との付き合い方」です。
以前に「英語をESLとして学ぶか、EFLとして学ぶか」という記事にて、「ESL(第二言語)」「EFL(外国語)」という二つの英語との付き合い方について書きました。
本書には「ENL(母国語)」も含め三つの付き合い方それぞれについての実例が書かれていましたので、「ESL」と「EFL」の性質についての詳細は前回の記事に任せて、今回はそれぞれに該当する国の実態について確認してみたいと思います。
◆ ESL(English as a Second Language)の国(マラウイ)のケース
マラウイはアフリカ南東部にある小国で小学校(8年制)の五年生から教育が英語で行われるようになる。子供たちには過酷な学習言語環境のため、5年生になると留年や中退が増え、教育水準の低下を招いている。
◆ EFL(English as a Foreign Language)の国(日本や韓国)のケース
英語圏の植民地になった経験がなく、英語を使えなくても日常生活で困らない。英語はあくまで学習言語であり、教室を一歩外に出れば母語の海にどっぷり浸かるため上達が難しい。最大の学習動機は「受験」だから、それが済めば英語力がどんどん衰えていく。
◆ ENL(English as a National Language)の国(アメリカやオーストラリア)のケース
母語としての英語を使う人が大部分を占めている。ただし、アメリカではスペイン語話者が約4000万人(そのうち半数はスペイン語しか話せない)存在しており、オーストラリアではアボリジニと呼ばれる先住民が独自の言語と生活様式を持っている。そのような人々にとっての実態は当然英語はESLということになる。
「日本もESLの国だったら英語をもっと簡単にはなせるようになるのに」とESLの国の人々を羨ましく思う人もいたかもしれませんが、これらの状況をよく把握してみると、日本人が母語で高等教育まで受けられるということのありがたみを改めて理解することができます。
最後に、「ESL」と「EFL」の違いを経験だけを頼りに理解していた先人(佐川春水)の例が紹介されていたのでご紹介します。
英文学者であった彼は小学校への英語導入は「時と金の浪費のみ」というタイトルで雑誌「英語の日本(1909年)」で次のように主張しています。
(1)英語は日本人にとっては絶対的に外国語(EFL)であり、
(2)外国人教師などは乳児が母語を獲得するような「自然」な外国語(生活言語)習得法を推奨するが、少年や大人が赤児になることはできない。
(3)文法や翻訳などは適切に用いれば外国語(学習言語)を学習する上で多大の効用がある。
上記文章中の()内は後から補足的に加えられたものだとは思いますが、それでもこの明察ぶりを見てしまうと、この人はタイムトラベラーではないかと疑わずにはいられなくなってしまいます。(笑)