日本人と英語

自国語の貧しさとの出会い

2016年3月9日 CATEGORY - 日本人と英語

語彙            

 

 

 

 

 

以前に書籍紹介ブログにおいて「英文法を知ってますか」という本を紹介しましたが、今回は本書の中から、現在実質的な国際語として世界に君臨する英語が実は、その後進性ゆえ、「貧しい言語」と考えられていたという事実について書いてみようと思います。

「貧しい言語」と考えられていた原因としては二つあります。 一つは、「語彙の貧しさ」、そして二つ目が「文法の未整理」です。今回は、前者である「語彙の貧しさ」について見ていきます。

「語彙の貧しさ」ということでいえば、明治維新時代の日本語が、せっせと英語を中心とする西洋の言葉の概念を、日本語(というよりは漢語)に直したり、場合によっては、カタカナを利用して、その言葉の音をそのまま日本語にしてしまったりしながら、語彙を増やしていったことが思い出されます。

この作業によって、日本はアジアで唯一、自国の言葉で西洋文明にキャッチアップすることができたのでした。

当時の日本に大きな影響を与えることとなった英語を母国語に持つイギリス人もかつてはその語彙の貧しさに悩み、日本人が行ったように他の言葉、主にラテン語からの借入によって自国語の豊饒化に取り組んだ時代があったというのです。

このようなプロセスを踏むには、一番初めに必ず経験しなければならないことがあります。

それは、自国語に対するコンプレックスを持つということです。

そのきっかけが「翻訳」です。以前の記事「グローバル化は必然か」に詳しく書きましたが、宗教改革によって聖書をラテン語を扱う宗教者の独占物ではなく、土着語である英語への「翻訳」によって民衆のものとする必要性が生じたわけです。

この翻訳の必要性が生じて初めて、「う~ん、言葉がない、、、」ということに気付くことになります。この時はじめて、自国語の貧しさに出会うことになります。

そこで、当時のイギリス人は究極的には、英語には存在しないすべてのラテン語語彙を英語に取り入れてしまおうという方法をとりました。このことにより、実に膨大な数のラテン語がこの時代以降の英語に入っているというわけです。

結果、古英語のほとんどの語彙がゲルマン語系で大幅にドイツ語辞典と重なっているのに対し、現代英語の時点では、ドイツ語と同源の言葉を探す方がかえって難しいくらいになっていると言います。 このように、イギリス人も母国語である英語の貧困さ、粗雑さ、洗練の無さなどを痛感し、それを補おうと努力を重ねることで、英語は豊潤化されていくこととなったのです。

そして、マルカスターという国語教育論の第一人者は1582年に出版した「基礎教育論」の中で以下のように述べています。

「どの言語にも最高に発達した時期というものがあり、後世の人はこれを基準とすべきである。それはギリシャではデモステネスとその時代の哲学者たちのギリシャ語、ローマではキケロとその同時代のラテン語であり、英語では自分の時代である」

この時期を境にして、イギリス人が自国語に対する自信を持ちはじめます。

そして、この後、フランシス・ベーコンやシェイクスピアなどの活躍が始まっていくのです。