日本人と英語

英文解釈における「破格」

2022年10月30日 CATEGORY - 日本人と英語

書籍紹介ブログにてご紹介した「英文解体新書」について、第一回目で「英文解釈が難しい理由」を明らかにし、第二回目からそれらについて具体例を挙げてきました。

三回目の「省略」続く四回目の「擬態」となんだか「あぶない刑事」のタイトル(あぶデカ世代なら確実に分かってもらえるはず(笑))のようなテーマ名が続いてきましたが、今回の第五回目が最終回です。

最終回のテーマはもちろんあぶデカ風で「破格」となります。

以下に、本書における著者の言及部分を引用します。

「『破格』とは標準的な英文法ルールから外れた正式には認められていない構造のことを指します。すなわち『間違い』です。ではなぜ間違いのようなものをわざわざ学ぶというのでしょう。まず第一に、正式に認められていないからと言って文章の中に登場しないかと言えばそうではないからです。ネイティブも人間である以上、ミスをすることもあれば話しているうちに文の構成がうまくいかなくなることはあります。そして、そのようなミスなどの中には一定の頻度で使われているうちに次第に誤りだとみなされにくくなり、事実上の新しい文法として定着していくケースもあります。加えて、著名な作家などが敢えて破格的な構造の文を使うような例もあることも忘れてはいけません。以上のような事情を考えた時、少なくとも一定頻度で生じる変則的な構造について、そのタイプや解釈の仕方を知っておくことが一つの大きな武器になると思われます。本書では破格のタイプを二つに分類して見ていきます。」

それでは、上記の二つのタイプごとに具体例で説明します。

①冗長な繰り返し

the author who Joan is reviewing his latest book

「ジョアンが最新作をレビューしている著者」

本来これは、the author whose latest book Joan is reviewing というように関係代名詞の所有格whoseを使って表現するべきものですが、会話の流れの中でwhoで始めてしまったがために文法の範囲内で完結させることができなくなり、途中で構造を移行せざるを得なくなった例だと思われます。

この事例を見てすぐ、アメリカ留学時代このようなパターンで苦しんだことを思い出しました。

というのも、文型という概念がない日本語を母国語にする私たち日本人はこのような形で話はじめてしまって、途中でどうにもこうにもならないということが頻発します。

ただ、ネイティブでもこのような「破格」でやり切ってしまう例があるということを知っておけば、それほど絶望感に襲われることもなく会話を続けることができる気がします。

②構文の融合

本題に入る前に少しだけ確認を。

「構文」とは、慣用表現として使われる文の形を言います。その意味で言うと、ルールと慣用の関係にある「文法と語法」と同じような関係が「文法によって作られた文と構文」に認められると考えるべきでしょう。

では本題に入ります。

The station is different than it used to be.

→different fromとother thanの融合

これくらいだと分かりやすいのですが、本書には著名な作家の事例としてノーベル文学賞受賞者であるカズオ・イシグロの小説にある以下のような文が紹介されています。

It wasn’t so much like she was ignoring him, than that she was trying so intensely to get through to me everything else had been blurred out.

「彼を無視しているというよりは、一所懸命に私に言いたいことを伝えようとするあまり、他のすべてがぼやけてしまっていたという感じだった。」

これは、not so much A as Bとless A than Bというどちらも「AというよりはB」を意味する相関構文を混同(融合)させて使用していると思われます。

ノーベル賞受賞者をつかまえて、間違っていると指摘するような勇気も意味合いもありませんので、やはり著者の言うように類型として受け止めようと思います。

 

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