英語の迷信(生活編)
2022年2月27日 CATEGORY - 日本人と英語
前回書籍紹介ブログにてご紹介した「英語の迷信 エッセイ事典」には合計550もの英語圏の「迷信 superstitions」が収録されていますが、今回から3回にわたって私が興味深いと思ったものをいくつか取り上げてみたいと思います。
今回取り上げるのは「生活」に関する迷信です。
① なぜ right(右) は right(正しい)と書くのか?
⇒Gods live in the right side, evil spirits in the left.(右側には善霊が宿り、左側には悪霊が宿る。)
「この観念はいたるところで様々なことに取り入れられている。ローマ人は特にこの信仰を重んじ、人体の右側には神が住まわれると信じて、神を崇拝する象徴として扱った。歩き始めるときも右側の足からスタートし、靴や靴下をはくときも右側の足から入れるように心がけ、こうすることによって善霊に満たされると信じていたのである。したがって、一度左足から家に入ったら、その家の人々は悪霊に支配されると考えていた。right が(右) という意味と同時に、(正しい)という意味を持つのもそういった古代人の発想に基づいていると言えるだろう。」
だから握手は左手ですべきではないのですね。
② なぜくしゃみは不吉の前兆なのか?
⇒God bless you.(神の祝福あれ。)
「古代ギリシャ時代、人々の間ではくしゃみは大きな危険を告げるしるしとされていた。紀元前430年頃、アテネでは the Great Athenian Plague と呼ばれる疫病が大流行したため、多くの人が苦しんでいた。あたりにくしゃみをする人がいると、それは恐ろしい病気の兆しに他ならないと恐れられた。くしゃみに対する概念はこのほかにもくしゃみをするとその人の体内から悪霊が飛び出すので、周りの人はそれを吸い込まぬよう注意しなければならないとか、くしゃみをした人のそばにいる人が『あなたの魂が逃げてしまわぬように(May your soul not escape.)』と言ってお辞儀をするなどがある。現在の God bless you. の直接の由来は、ローマ教皇の位についた聖グレゴリウス1世が、当時はやっていた疫病の流行は空気の腐敗によるものだと考え、人々がそれによってくしゃみをして命を落とすことから救うために、周りにいる人は God bless you. という特別の祈りをしなければならないと命じたというもの。」
アメリカ留学時代、くしゃみをして周りから God bless you. と言われるたびに返事に困ったことを思い出しましたが、私のためにその命令に従ってくれているのだとすれば、素直に「Thank you.」と返事をすればよかったのだと理解できます。
③ なぜ鏡を割ると不吉なのか?
⇒Break a mirror and you will have seven years of bad luck.(鏡を割ると7年間は悪いことが続く。)
「鏡の製作はまだガラスのなかった古代オリエント地域で金、銀、真鍮、青銅などを材料として始まったと言われている。像が映るという神秘性が鏡を神聖あるいは魔法が宿るものと解釈させたに違いない。7年間という期間は紀元1世紀のローマの思想に基づいている。彼らは全ての生物は7年ごとに生命が新しくされると考えていた。そのため、割れた鏡は、健康を害したという意味にとられたのである。」
まあ、そのような文脈を共有してない私たち日本人であっても、鏡の神秘性に関する認識は完全に理解できますね。
④ なぜ結婚は6月にするといいのか?
⇒June marriages are lucky. (ジューンブライドで幸せになれる。)
「古代ローマでは、女性の守護神で結婚を司るジューノー(Juno)を祭る祭礼が6月1日に催されたことから、結婚式を6月にあげる習慣ができた。逆に5月には、死者の霊を祭る祭事が行われていたため、『5月に結婚するときっと後悔するだろう』と言われ、現在でも人々は5月の挙式を忌避する傾向がある。」
⑤ なぜ指輪は左手の薬指に?
「そもそも指輪が結婚式に取り入れられるようになったのは紀元800年代、ローマ教皇聖ニコラウス1世がキリスト教会に神聖な誓約の証としてその使用を委託したことに始まる。そして、それがなぜ左手の薬指なのかというと、当時人間の持つ様々な感情とりわけ愛情の中核は心臓にあると信じ、左手の4番目にあたる薬指は、人体の左側に位置する心臓に直通する静脈が通っていると考えられていたため、二人の愛情が常に満ちているようにとの祈りを込めたためである。」
このような背景文脈を全く省みずに、自分自身の結婚式を6月に挙げ、何の疑問を持たずに左手に薬指の指輪を交換し合ったことに、顔が真っ赤になる思いです、(笑)