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会議は多様性を破壊する

2021年10月31日 CATEGORY - 代表ブログ

皆さん、こんにちは。

前回ご紹介した「多様性の科学」に絡めてコロナ問題について書きたいと思います。

コロナ対応においては「新型コロナウィルス分科会(尾身茂会長)」がその中心的役割を果たし、その決定が政府の決定に非常に大きな影響を及ぼしました。

この会議は政府の諮問機関としての役割を果たすため、この構成員は様々な公衆衛生のみならず、経済や地方自治をはじめ様々な分野の多様な意見を反映して、政府が政策判断の参考にするべきものであったはずです。

しかし、その会議の決定は尾身会長をはじめとする公衆衛生の専門家の達成目標である「コロナゼロ」を前提としたものが多かったこと、そしてこの会議での決定を政府がほぼ追認する形で政策決定がなされたことで、その目標を是とする人々とその目標に不満を持つ人々の分断を引き起こしてしまいました。

この会議のメンバー構成にはある程度の多様性が確保されていたにもかかわらず、なぜ、あそこまで公衆衛生一辺倒の決定がなされることになったのか、私は当時からずっと疑問に思ってきました。

本書より、その疑問の回答への大きなヒントとなる言及を以下引用します。

「会議を開くことそのものには当然意義がある。一人より大勢の知恵を絞りあう方が成果が上がる。しかしここで我々は厳しい現実と向き合わなければならない。大抵の会議において参加者の多くは発言をせず、地位の格差で方向性が決まる。(会議の最初は最も地位の高い人が発言することが多いと思われるが)最初の人が自分の予測を言うと、それを聞いて隣の人が自分の予測を言う、そしてまた隣の人が、、、といった具合だ。こうすると最初の人の予測は単なる個人の予測というだけではなく、次の人達への『指標』になる。次の人は全く違う予測をする場合もあるが、最初の人の予測に寄せたり、完全にまねをしたりすることも多い。つまり、各情報が間違っていても相殺されなくなる。こうした現象は『情報カスケード(集団の構成員が皆同じ判断をして一方向になだれ込んでいく現象)』と呼ばれる。一方で、多様性を確保するために、会議という仕組み自体をなくしてしまうというアイデアも存在する。例えば、経済予測の実験では、会議をするのではなく、複数のエコノミストの予測を提供し、それらを単純に平均すると驚くほど正確な予測になるという結果が導き出されている。これが集合知の力だ。」

とはいえ、組織の意思決定は、経済数値の予測のように平均をとって決めるというわけにもいかないわけで、会議のこのようなネガティブな性質を熟知した上での意思決定が必要になります。

例えば、コロナ分科会という「会議」を作るのではなく、政府が各分野の専門家を個別に丁寧に聞き、それらの情報を全て公平な目で見ることによって政府としての決定をするという形をとっていたとしたら、多様性の力(集合知)を最大限に引き出した政策を実行できたのではないかと思うのです。

その決定が可能なのは、国民から選ばれた政治家によって選ばれた総理大臣しかいないわけですから。

多くの国民にとって、政府の意思決定がまるで一会議の最初に発言する人の判断を総理大臣が追認するだけのような形になってしまったことは非常に大きな損失だったと思います。

これを機に、政策決定における「会議」の存在を根本から考え直す必要があるのかもしれません。

 

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