誤解だらけの現在完了形
2022年5月11日 CATEGORY - 日本人と英語
書籍紹介ブログにてご紹介した「英文法再入門」からテーマをいただいて書いていますが、第三回目のテーマは「現在完了形」です。
この「現在完了形」ほど、その本質を理解しないで分かったフリをしているだけの学生が多いことに驚かされる文法項目はないと思っています。(その本質については以前のブログをご参照ください。)
いや、それは学生だけでなく教えている教師自身もその本質を理解せずに教えていることが少なくないからだと思っています。
そのことがよく分かるものとして、「次の英文を現在完了の4類型(結果・継続・完了・経験)のいずれかに分類しなさい」という問題の存在があげられます。(ある程度の文脈把握ができる文章の中であればまだ理解はできますが、一文のみについてのこの作問は完全にアウトだと思っています。)
私は自ら主宰する「文法講座」でこの分類を3類型(継続・完了・経験)として、「継続」だけは他の二つと別個に把握することはできるけれども、一文だけを見て「完了」と「経験」の二つを分類させるなんてありえない、その問題に対する回答は、「そんなのその発言者の事情による」ということでしかないと説明してきました。
本書には私のこの説明の真意を非常に分かりやすい例を出しながら説明してくれていましたので以下に該当部分を引用します。
「動詞には『出来事動詞(動作動詞)』と『状態動詞』の二種類があります。前者はいわば動きのある動詞でrun melt dieなどです。一方後者は resemble know like などのように動詞でありながら動きのないものです。そして、その最たるものがbe動詞です。ただし、この二つは必ずしも明確に区別することはできません。例えば、use play などは一般的には前者と捉えられますが、『日ごろから使っている(弾いている)=習慣』のような意味合いでは、後者と捉えられるからです。出来事動詞は一回限りの動きですので、現在完了形では、過去のその動きの結果を今、haveして(持って)いるということになります。そして、その結果がどのようなものかは動詞の意味や文脈、そして常識などから総合的に判断します。つまり、その『結果』の種類として『完了』と『経験』があるということです。状態動詞、例えば like は『愛好している』という状態を小さい時からhaveして(持って)いるわけだから、その状態を『継続』しているとなります。つまり、出来事動詞を用いた現在完了の文において生じている事態の『結果』が『完了』と『経験』に分けられ、状態動詞を用いた文においては『継続』のみに収まるというわけです。ですから、現在完了形の意味を、4類型(結果・継続・完了・経験)とするということは、『イタリア料理』『日本料理』『トマト』『鯛』というように次元の違うものを並列させて分類しているようなものです。(一部加筆修正)」
もうこれ以上ないスッキリとした説明に心の底からほれぼれさせられてしまいました。