「雷」という意味を持つ英単語は存在しない
2024年9月18日 CATEGORY - 日本人と英語
書籍紹介ブログにてご紹介した「一度読んだら絶対に忘れない英単語の教科書」からテーマをいただいて書いていますが、第三回目のテーマは、言語ごとの「単語の意味の範囲」についてです。
本書には、日本語と英語という二つの言語における単語の意味の範囲の違いが存在するということを「雷」に関するエピソードでもって非常に興味深く気づかせてくれる部分がありましたので、以下引用の上ご紹介します。
「いきなりですが、『雷』は英語で何というでしょうか?thunderでもlightningでもありません。実は、英語には日本語の『雷』という意味に当てはまる単語は存在しません。なぜ、英語には日本語の『雷(ピカッとなる光とゴロゴロという音ががったいしたもの)』に当てはまる英単語がないのか?そして、なぜthunderやlightningは雷という訳にならないのか?まず、thunderは『雷鳴』という意味で、『ゴロゴロと鳴っている音』のことです。そして、lightningは『稲妻』で、『ピカッとなる光』のことです。そして、『雷鳴』と『稲妻』が合体したものをthunderboltと言います。thunderboltの訳は『雷』ではなく、『雷鳴と稲妻(というように別々のものを一緒に言っているだけ)』のほうが正確に表しています。なぜかと言えば、これは地域や信仰している宗教によって異なりますが、ギリシア神話では『ゴロゴロと雷鳴を鳴らす神』と『ピカッと光る光を出す神』は違うと考えていたからです。thunderboltはthunder(雷鳴)とbolt(稲妻)が合体してできた複合語です。なので、比較的新しく作られた単語になります。複合語とは別々の単語が合体して一つの単語になったものなので、厳密には純粋な英単語とは言えません。そういった理由から、冒頭で『雷』という意味の単語は存在しない、とお話ししたのです。ちなみに、thunderの語源は、ゲルマンの神様『トール』が由来です。トールはゴロゴロと雷鳴を出す神様として知られていました。このトールが派生して、ラテン語のtonareになり、このtonareがthunderの語源です。『トールの神様の騒音』というニュアンスです。このように、国や文化、宗教など様々な要因から言葉は作られているため、異なる2言語の間ですべての単語がぴったり1対1の対で当てはまることはほぼありません。」
なるほど!と思いつつも、ちょっと分かりにくい部分がありましたね。
thunderboltという言葉が新しくできたのなら、それが日本語の「雷」に対応しているのではないかと一瞬思ってしまったのですが、それは著者の説明の意味をしっかり捉えられていないからではないかと思いなおしました。
つまり、thunderboltという単語は、その二つを同時に言っているだけでその二つが一つのものという意味ではないということではないかと。
ただそうは言っても、雷という現象が「光」と「音」で構成されていることを考えれば、どこかに二つを一つの言葉で表す必要性に気づいてもよさそうなものだと日本人の私は思ってしまいます。
ただ、一方で物質に対する名づけに際して、温度に違いがあるだけで「水」と「湯」を区別する必要性がなぜあるのだ?とする外国人日本語学習者の疑問(恨み節?)は容易に想像できますので、
「国や文化、宗教など様々な要因から言葉は作られているため、異なる2言語の間ですべての単語がぴったり1対1の対で当てはまることはほぼありません。」
という著者の言葉はまさにその通りだなと思います。