意外と難しい「人(々)」という表現
2023年4月16日 CATEGORY - 日本人と英語
書籍紹介ブログにてご紹介した「英文法の謎を解く(続・完結を含む三部作)」からテーマをいただいて書いていますが、第五回目のテーマは「人(総称)」です。
「総称としての人(々)」を表す英単語として、「a person」「one」そして、その複数形として「people」「you」が使われます。
ということは、「persons やones」はダメということになります。
また冠詞なしの「Man」は「a person=one」の意味として使えますが、「a manやthe man」はダメ。
そして、『humans』や『human beings』は微妙だということです。
と、このように「人(々)」という表現は一筋縄ではいかないのです。
つきましては以下に、この難しい問題に対して本書が補足しながら答えてくれている部分を引用します。
「人間一般を表す『人は』については、まず『a person=oneの法則』を覚える。これらは『人ならだれでもいい、人間一般を抽象的に表し、それをある一人の不特定の人間に仮託させて全部を語らせる』機能がある。『a person』の複数形は字形通りやれば『persons』であり、『one』も『ones』となるが、これらは使わない。なぜなら、例えば日本語でいえば「~にて御座候」のようなものすごく堅苦しい古風な表現になってしまうので完全にダメと断言はできないものの英米の法律家が裁判所に提出する書類などにのみ使われると思っておくべき。実は、実際上かつ実質的に『a person=one』の複数形は『people』だと考えられる。また、『people』のほかに『You』も使われる。しかし、これは『あなたは』のYouではない。目の前の特定の人物であるYouとは違うのである。Youには『人間だったら誰でもいい、人類全体を指しているYou』がある。これをgeneric use(総称的用法)のYouという。『非人称のitの用法』はよく出てくるのにこの『総称的用法のYou』は普通の文法書では出てこない。このYouこそPeopleであり、『我々人間は』と訳すべきだと主張する。もう一つ、無冠詞の『Man』も同じように『我々人間は』と訳すべきものとして挙げられる。ただし、『a manやthe man』には女性が含まれないため、こちらはダメだ。また複数形にして『Men』も同じ理由でダメ。では『Man(人間、人類)』の複数形として『humans』や『human beings』はどうだろうか。これらは正しい表現だが、それほど使っていい言葉ではない。なぜならこれらは人類学、社会がいくなどの学術用語的な硬さを引きずっているから。普通の英語国民は日常生活ではあまり使わないからだ。(一部加筆修正)」
ちなみにこれは私も非常に頻繁にやってしまうことですが、「We」を「人間、人類」の意味で主語にすることも次のように戒められています。
「YouをWeにして『私たちは』とすると、日本人にはものすごくしっくりくる文になるし、実際にすぐに『We Japanese』と英語国民に向かってしゃべりだしがちなのだが、これは日本が今でも部族社会であるからだ。日本は近代社会の対立概念である伝統社会なのである。もっと言えば、日本人はgroup-minded(集団性志向が強い)国民なのだ。英語のWeにはgeneric use(総称的用法)はない。それなのに使ってしまう我々に対して英語国民は『なぜあなたが日本人全体を代表してそんなことを決めつけられるのか』とかなり奇異な印象を持つことになる。総称用法のYouと、『私たち』のWeと、『私は』のIの区別もつかないような水準の言語使用能力しかないのにどうして、西欧近代社会が確立した個人というものの冷酷さと恐ろしさが分かるというのか。この個人というものが分かっている日本人に、私はあまりであったことがない。(一部加筆修正)」
自分が直接的に叱られるような気がして身の置き所がありませんでした。(笑)
連続して「見た目が単純な『英文法』ほど奥が深い」の典型例をご紹介してきましたが、同じように「単純な『語彙』ほど奥が深い」と言えそうです。