日本人と英語

なぜ「I have a cat」は正しくて「I like a cat」は間違いなのか

2023年4月16日 CATEGORY - 日本人と英語

書籍紹介ブログにてご紹介した「英文法の謎を解く(続・完結を含む三部作)」からテーマをいただいて書いてきましたが、今回(第六回目)が最終回です。

最終回のテーマは「I like a cat 問題」です。

と、いきなり言われても何のことかさっぱりだと思います。

著者はこのシリーズを書かれていた当時、すでに本業である国際政治評論家のみならず英語教育業界でも飛ぶ鳥を落とす勢いで活躍されていたわけですが、本書で自分の過ちを正さずにずっと誤った英語を教え続けている日本の英語教育人をコテンパンに叩きのめしているだけあってご自身の誤りについても素直に認めています。

例えば、第一作目において「種類全体のa」の実例として自ら作文し紹介していた

I like a cat.

という文について第三作目において以下のように自己指摘しています。

「私が前著『英文法の謎を解く』の101ページで上げた例文のI like a cat.『私は猫が好き』は間違いである。英文としては誤文であった。私は自分の書いた文をはっきり誤文と認めなければならない。私の英語力といってもこの程度のものなのである。あそこでは、私はa=one of anyすなわち『種類全体を表すa』の例文としてはI like a cat.ではなくI have a cat.『私は猫を飼っている』を例文として挙げるべきであった。」

なんとも潔い姿勢であり、私もこうありたいと強く思ったわけではありますが、肝心のなぜ「I have a cat」は正しくて「I like a cat」は間違いだとした理由については以下の通り必ずしも納得のいく内容ではありませんでした。

「動詞の違いによってなぜ英文に正誤の差が出てしまうのだろうか。その理由はその文が持つ意味論上の問題点と文法上の問題点の違いにある。I have a cats.は正しいが、I like a cat.が誤文なのは意味論上、誤りなのである。I like a cat.はたとえ日本の中学高校の英語の授業で今でも教え続けているのだが、やはり間違いである。」

う~ん。

さすがの著者も自分の誤りを認めてはいるものの、なぜ誤りなのかについて逃げていると言わざるを得ません。

ただそれだけ、この「冠詞」というものが私たち日本人にとっては深い闇の中の存在だということなのでしょうか。

そのため、ウェブ上でいろいろ探し回ったのですが、この問題をすっきり解決してくれているサイトを見つけることはできませんでしたが、一つだけすっきりはしないながらも核心に近づいている感じのサイトはありましたので、そちらの内容を要約してみます。

「日本語は複数形を使わない場合が多いので、『猫が好き』といいますが、『猫が好き』の“猫”は色んな猫をひっくるめた猫なので、catsになるんです。『私は猫が好きです』には『私は猫達が好きです』という意味も含んでいるということです。つまり、これは定冠詞の問題というより、likeの問題ではないか。”I held a cat.”なら特に違和感はなさそうだが。たとえば、猫を抱いて『a cat』と指さすことはできそうだ。しかし、そのとき、”I like a cat.”とは言えそうにない感じはする。会話された時点で、聴者に既知情報になるから、”I like the cat.”にしかなりえないのでは。つまり、”I like a cat.”が変な感じがするかどうかは、その発話の状況の情報性によるのか? 結論は特にないのだが、これって、つまり、”I like a cat.”って言ったとき、それってどんな意味の感覚があるのか、よくわからん、ということか。」

この「”I like a cat.”って言ったとき、それってどんな意味の感覚があるのか、よくわからん」ということを指して著者は「I have a cat.とI like a cat.という動詞の違いによって意味論上の違いが生じる」と言っていると私は解釈しました。

連続して「見た目が単純な『英文法』ほど奥が深い」の典型例をご紹介してきましたが、この最終回が今までで最も奥が深い(闇が深い)と言えそうです。

 

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