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英文法の謎を解く(続・完結を含む三部作) #299

2023年4月5日 CATEGORY - おすすめ書籍紹介

【書籍名】 英文法の謎を解く(続・完結を含む三部作)

【著者】  副島 隆彦

【出版社】 ちくま新書

【価格】  各¥660 + 税

【購入】    こちら

著者の副島隆彦氏については、政治評論家・大学教授(静岡の常葉大学)としての本を何冊か読んだことがありましたが、実は彼がかつて代々木ゼミナールの英語講師を経験され、英語に関する著作も多数書かれていたということを本書を手にして初めて知りました。

実際に読んでみるとこれが非常に興味深く、どんどん引き込まれていきました。

というのも、著者は、他のアジア、特に東南アジアの人々と比べ日本人が「英語下手」である原因を次のように断じています。

「日本人の英語は地面につっかえ棒を立ててその上にコンクリートのビルを建てたような倒壊の危険性を持つ英語である。何の実感も伴わない、やせこけた細々とした英語の基本理解の心もとない土台の上にまるで50階建ての英語知識の高層ビルを建てたようなものである。」

その上でこれを「ピジン英語」と「クレオール英語」の違いで具体的に説明しています。

著者は、日本のほとんどの辞書がこの二つを「混成語(現地語と混ざった英語)」と同一視しており、その違いに言及しておらず、この違いが分かればあなたは言語学者だと言っているのですが、実は私はこのブログでその違いについてすでに説明していました。

とはいえ、それに続く著者の説明も非常に分かりやすいものですので以下引用します。

「ピジン英語とは植民地の現地人が白人との取引のために生み出した片言英語である一方で、クレオール英語は強いなまりと一見めちゃくちゃに見える文法規則でありながらも英語母国語話者と互角にやり合える言語として英語のファミリーに属するものである。つまり、後者は彼らと『コトバの心、コトバの精神』を共有しているのだ。そして、最も重要なのは、クレオール英語はその場限りのピジン英語とは異なり、言語の遺伝子がつながっていて、常に自己増殖できる英語として、親から子へそして孫へと世代を超えて伝わっていくものだ。そのため、日本人の英語が前者であり、東南アジアの人々の英語が後者であることが日本人の英語下手の本質的な原因ということになる。(一部加筆修正)」

このことを前提にすると日本人が英語下手から脱却するためには、日本人もクレオール英語を身に着ければいいのだということになるのですが、しかしこれも今までこのブログでお伝えしてきたように、これはトレードオフの問題であり、私たちが思考の基礎である日本語の統語システムを英語が侵食することを覚悟できるかという問題になっていきます。

著者はその問題の難しさを次のような例で説明しています。

「例えば、『僕は 思うんだよね 君は すべきだよ それを。(I think that you should do it.)』のように頭の中に英単語が同時に流れるような変な日本語を認めるだろうか。あるいはさらに、『アイは シンクする ユーは イットを シュッドドゥーだと。』というようなかなり怪しい話し方をする日本人の出現を認めるだろうか。ここが思案のしどころだ。」

日本人として日本語の統語システムを売り渡すようなことまでせずとも、英語の基礎である「文法」を日本人の体にしみ込ませるレベルで理解させることができれば、なんとか日本人の英語をその場限りの「ピジン英語」で終わらせることなく親から子へそして孫へと世代を超えて伝わっていくようなものに近づけられるのではないかというのが著者の本書執筆の動機のようです。

実際の内容も質量ともに非常に豊富で有益なものでした。

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