日本人と英語

「I runs.」の不思議

2021年7月21日 CATEGORY - 日本人と英語

書籍紹介ブログにてご紹介した「英文法の『なぜ』2」からテーマをいただいて書いていますが、第六回目の今回のテーマは「三単現以外の人称と動詞の語尾変化」です。

私は常々、英文法の学習の中で「三人称単数のs」ほど費用対効果の低いものはないと思っています。

というのも、これまで見てきたように、英語の歴史は「単純化」の歴史であって、そもそも三人称単数だけでなく、動詞の現在形は単数複数全ての人称ごとに語尾変化があったものが単純化されていく過程で、なぜか「三人称単数のs」だけがただ単にうっかり取り残されてしまいました。

つまり、これは「言語の化石」にすぎません。

それなのに、日本の学校教育ではなぜかこの化石をしつこいくらいに「極め」ようとしているわけですから、「費用対効果の低い」のです。

中学生の頃、こんな化石に対するケアをうっかり忘れてしまったがばかりに、全てを否定されるような採点をされた経験をもつ人は少なくないともいます。

こんなことのために自信を無くし英語嫌いになる人がいるとすれば、それは「費用対効果が日低い」では済まされない、むしろ手間をかけて国家の損失を生み出しているとさえ思えてきます。

ただ、本書にはこの費用対効果の低い「言語の化石」にもそこそこの存在意義があるという指摘がありましたので以下に該当部分を引用します。

「現代英語で『三単現』の動詞にsをつけるのは合理的な理由があってのことではありません。これが残ったのはいわば運命のいたずらです。このsという語尾が残った理由を強いてあげれば、それは『現在形を示す標識』であったからと言えるでしょう。であれば、それを三人称単数に限る必要はありません。一人称に使っても、二人称に使っても、複数に使っても現在形を示す標識として機能します。実際にアイルランド英語では、I runs. のように数・人称に関わりなく動詞の語尾にsをつける言い方が行われてきました。英語で三単現の場合にだけ動詞にsをつけることが広まったのは近代英語以降のことです。しかし、17世紀になってからも複数形の主語に対し動詞にsをつけることが行われていました。実際にエリザベス女王も書簡でwicked menという複数形の主語に対してgivesという動詞を使っています。」

「三人称単数のs」ほど費用対効果の低いものはないとこれを目の敵にしてきた私ですが、確かに現在形と過去形が一緒の形をしている「let」「put」「hit」「hurt」「shut」などの時制の区別には十分威力を発することは認めます。

ですが、この問題を解決するためには「三単現」というルールを残すのではなく、これらの動詞を「規則動詞」に変えた方が合理的であるとは思いますが。

 

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