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アメリカでも「チップ疲れ」?

2023年4月26日 CATEGORY - 代表ブログ

皆さん、こんにちは。

かなり前にはなりますが、以前にこのブログで「日本にチップが普及しない理由」という記事を書きました。

その中で、欧米に『チップ』の習慣が厳然と存在している理由は、「チップが毎回毎回交換のタイミングで、サービスと金を『等価』に調整し、お互いの貸し借りをその都度チャラにするものだからだ」と確認しました。

これは、「次、何時その人と会えるか分からない」という欧米など広大な土地における環境で成立する習慣であり、逆に土地が狭く、人々がもっと密接に生活する環境である日本では、そうした調整を敢えてしないことで、交換を不等価にして次なる交換を呼び込み交換を継続させるために、「チップ」が普及しない社会が出来上がっているのではないかという考察でした。

その際に、私は「なるほど!」とこの説明に大きな説得力を感じました。

ところが、この説明は大切な基礎的情報を無視した議論であり、実はこの「等価・不等価」の関係は逆だったのかもしれないということを指摘するウェブ記事を見つけましたので以下に要約します。

「米国ではレストランでチップを渡すのは当たり前。これまでは話題にさえならなかった。通常、飲食代の15~20%で、これが接客業務担当者(チップ制労働者)の収入の大きな部分を占める。しかし、コロナ禍で『テイクアウト』の機会が増えることでチップを渡す、渡さないのジレンマに陥る姿が見られるようになった。以前ならチップを渡さなかった場面でも渡すようになったことで、消費者の負担が増えているのだ。こうした状況について専門家は、米国人の間に『チップ疲れ』が出てくる可能性があると指摘する。過労やインフレに直面する中で、誰にどれだけチップを渡せばいいのか、分からなくなるというのだ。しかし、労働者への『公平』な賃金を求める権利擁護団体『One Fair Wage』のサル・ジャヤラマン代表は、『チップについて考え続けるのが嫌なら、一般労働者の最低賃金を下回るチップ制労働者の報酬体系を変えるための運動に参加して』と呼び掛ける。新型コロナウイルスのパンデミックの影響で外食する人が減り、チップ制労働者の報酬問題がよりはっきりとした形で見えるようになった。パンデミックは収束し、レストランにも客が戻ってきた。ところが、今度は働き手が足りない。飲食業界では労働者が一斉に職場を去り、『革命』が起きているとジャヤラマンさんは話す。ただ、変化も生じている。ワシントンDCでは昨年11月、チップ制労働者に対しても最低賃金が支払われることが決まったのだ。」

欧米の「チップ」は確かに「サービスと金を等価に調整し、お互いの貸し借りをその都度チャラにするものだ」ということは事実ではありますが、それは店から労働者に支払われるべき報酬が、そもそも「不当(他の業界と比べて)」に安くても許容されてきたという社会的不均衡を「チップ」という形で無理やり調整してきたにすぎないという事実に目を向けるべきだということがこの記事のポイントなのではないでしょうか。

その視点から、改めて日本において「チップ」が存在しない理由を考えてみると、「日本では、そうした調整を敢えてしないことで、交換を不等価にして次なる交換を呼び込み交換を継続させる」とした前回の記事の指摘は、少なくとも欧米との比較においては正しくないのではないかと思えてきました。

なぜなら、日本では制度としてあらゆる業種に「最低賃金」が保証されているため、そもそも「交換は不等価ではない」からです。(もちろんそれ自体が欧米に比べて割安であるという議論はありますが)

このように考えてみると、欧米における「チップ」の習慣の是非に関する議論は、私たち日本人の立場からでも、欧米の消費者の立場からでもなく、欧米の接客業務担当者(チップ制労働者)がどう受け取るかという視点を中心に行われるべきものだと認識することができました。

私個人としても、日本人として感じていた欧米のチップに対する「違和感」を改めて大切にしていこうと思いなおしました。

 

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