
TOEICとスピーキング力の関係
2019年10月4日 CATEGORY - 日本人と英語
書籍紹介ブログにてご紹介した「超高速PDCA英語術」からいくつかテーマをいただいて議論をしていきたいと思いますが、第二回目のテーマは「TOEICとスピーキング力の関係」です。
著者が主催する「トライズ」では、英語能力の測定テストとして、TOEICではなくスピーキング能力測定に特化したヴァーサントというテストを活用されています。
この試験についての詳細については、以前に「ヴァーサント体験記」というブログ記事を書いていますのでこちらをご参照ください。
この体験記の中でも書きましたが、著者が英語のコミュニケーション力を高めることを目的として英語学習を進めるための英語力測定のツールとしてTOEICを使わずにヴァーサントを活用するのには以下のような明確な理由があります。
TOEICは「読む・聞く」という受信二技能の能力を測定し、それを統計的処理によって「話す・書く」という発信二技能の能力を「推定」しているだけです。
ですから、現在スピーキング力を最も重要視している日本企業が、社員の英語力を測るためのツールとしていつまでもTOEICを使用しているということことは、直接的に必要な能力の測定をせずに別の能力を測っているだけということで、あり得ないことです。
このことについて著者は、かつては、体の安定性が必要な要件とされる仕事をしていた会社が、背の高さが必要な要件とされる仕事へ変更した場合の採用活動において、「身長」という基準に変更することなく、今まで通り「体重」という基準を使い続けるようなものだというたとえ話をもって指摘されていました。
この理屈をもって、私はSEACTテストを開発したのでこの著者の主張には完全に同意します。
しかも、本書には、このTOEICがどれほどスピーキング力を測ることには適していないかということについて豊富なデータを示しながら明らかにしていましたのでその点についてご紹介したいと思います。
まずはこの図表をご覧ください。
例えば、TOEIC900をとった社員がいたとしましょう。
一般的には、TOEIC900の記述は、「すぐにでも海外出張や赴任レベル」とされていますが、このグラフの横軸におけるTOEIC900のポイント上の縦軸ヴァーサントの点数分布をみてみますと、40点~実に80点にまでわたっています。
ちなみにヴァーサントの40点は、「家族や仕事について基本的な述べる事ができる(初~中級者)レベル」そして、80点は「自然な表現で自分の考えを詳細に説明できる(ネイティブ)レベル」ということなので、もはや全く別次元のレベルなのに、TOEICでは同じ900と判断されてしまう可能性があるということです。
ここまで見事にTOEICの不完全性を明らかにしているデータは、私としては初めて見ました。
ただ、誤解していただきたくないのは、TOEICは、「読む・聞く」という受信二技能の能力を測定するための試験としては問題がないということです。
それは、TOEIC900のポイント上の縦軸ヴァーサントの点数分布をみてみますと、40点未満は一つもないことから、会話に必要な最低限の文法・語彙知識については問題ないことを確実に評価していると考えられることも表しています。
つまりは、テストを使用する側は、どんな目的を持っているかによってしっかりと使い分けをすべきということです。
体験記でも書きましたが、ヴァーサントもコンピューターがすべて測定しているものなので、人間と人間との感情のぶつかり合いを含めたスピーキング能力を完璧に測定すくことにはまだ疑問は残りますが、現時点においてはかなりいい仕事をされているなという感覚を得たことは事実です。