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スタグフレーション

2023年3月29日 CATEGORY - 代表ブログ

皆さん、こんにちは。

少し前に「世界インフレの謎」という本を紹介したブログの中で次のような感想を書きました。

「(日本で進行しつつあるインフレは)賃金が上がらない中での『物価上昇』ですので、これはもう『スタグフレーション』といってもよいのではないかと思います。」

しかしながら、今のところ日本の経済の現状を「スタグフレーション」というワードを出して説明するマスコミ報道などは私が知る限り皆無です。

私は、この「スタグフレーション」という用語の意味を昔公民の授業で習った通り「景気が後退していく中でインフレーションが同時進行する現象」と理解をしています。

確かに、ここのところ大企業の賃上げのニュースが多くなってきていますが、それは大企業に限定したものであり、日本における企業の99.7%を占める中小企業ではそれどころではないというのが実情でしょう。

となれば、その要件をすべて満たす日本経済の現状はまさに「スタグフレーション」ではないかと思うのですが、冒頭の通りそのように説明されることはないということは、私がその内容を十分に理解していない可能性を疑ってみるべきではないかと思いました。

というわけで、丸ごと一冊「スタグフレーション」について書かれた「スタグフレーション-生活を直撃する経済危機」を読んでみることにしました。

本書を実際に読んでみた結果、著者の見解も私が昔公民の授業で習った通りの「景気が後退していく中でインフレーションが同時進行する現象」という理解と何ら変わらず、その結果、著者としてもすでに日本経済の現状は「スタグフレーション」に入っていると考えることも可能だとしていました。

そこで本書とは別に世界の歴史においてかつて起こったスタグフレーションの事例を調べてみました。

◆イギリス

そもそも「スタグフレーション」という名称は英国の下院議員イアン・マクラウドが1965年に議会で「私たちは今両方の世界で最悪な状態にある。一つは物価上昇(インフレーション)、そしてもう一つは景気停滞(スタグネーション)。私たちは今まさに(この二つを合わせた)スタグフレーションの状態にある。」と演説の中で発したのが最初だということで、イギリスではすでに1960年代半ばにはそのような状態にあった可能性があるが、一般には1970年代インフレと失業が深刻だった時期がそれにあたると考えられている。(そこからの脱却を成し遂げたのが規制緩和を断行して鉄の女として有名となったサッチャー首相です。)

◆アメリカ

1979年の第2次オイルショックにより、スタグフレーションが深刻化した。(1980年代にロナルド・レーガン大統領による規制緩和を柱としたレガノミクスやFRBによる強力な金融引き締め政策によって終息。)

このように、「スタグフレーション」という現象は世界史上二つしか認識されておらず、そのいずれも、世界史上に残る「危機的状況」であったことは間違いないことです。

というのも、スタグフレーション対策はインフレと不景気の合わさったものですので、通常のインフレ対策と景気向上策という全く正反対の対策を同時に行わなければならないという状況に追い込まれるからです。

その難しい状況を打開するために、イギリスのサッチャーとアメリカのレーガンは、政治家であれば誰もやりたくないであろう「(規制緩和による)イノベーション創出」を体を張って断行したのです。

日本においてアベノミクスが最終的にうまくいかなかったのは、三本の矢のうちの最も重要である「(規制緩和による)成長戦略」に手を付けられなかったからです。

その意味で、難しい「スタグフレーション」にも処方箋はあるのです。ただ、その処方を実行する覚悟があるかどうかだけなのです。

 

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