武器としての決断思考
2024年1月12日 CATEGORY - 代表ブログ
皆さん、こんにちは。
瀧本哲史氏の著作が魅力的過ぎてすでに四冊をご紹介してきたわけですが、そろそろいい加減にしろと言われそうなので、これで最後としたいと思います。
リレーの最終回として今回ご紹介するのは、2011年に彼が京都大学で持たれていた「意思決定の授業」の内容をまとめて出版された「武器としての決断思考」です。
今振り返ってみると、著者の「武器として」シリーズは、まず「僕は君たちに武器を配りたい」で総論的に私たちがむき出しの資本主義社会で生き抜くために必要な「投資家的視点」を持つことの重要性を明らかにしたうえで、「投資家的視点」を持って戦うための具体的スキル(武器)として「意思決定のスキル」に関する本書とその意思決定を実現するための「交渉のスキル」を前回の「武器としての交渉思考」で解説するという立て付けになっていました。
そのため、順番としては逆になってしまいましたが、「意思決定のスキル」を学ぶための「武器としての決断思考」を今回取り上げさせていただくというわけです。
前回の「武器としての交渉思考」では、「交渉」とは「立場が異なり、自由に意思決定できる二者が合意を目指してやり取りする(二者間での)コミュニケーション」であると学びました。
それに対して、今回学ぶ「意思決定」の具体的方法として挙げられている「ディベート」は「あるテーマを設定してそれに対する賛成(肯定)意見と反対(否定)意見を戦わせるもの」であり、その戦いの結果は合意ではなく、自分と相手のいずれかの主張の結果を第三者に採用させるための(三者間)コミュニケーションだと言います。
そのポイントは、自分と相手はそれぞれの好き嫌いではなく、くじ引きでどちらかの立場に立つかを決めるというところにあります。
本来的にはディベートは第三者に採用させるためのものですが、特定のテーマに対して賛否両論を自分の頭の中で整理することで根本的な理解にたどり着くことがディベートの本質であるため、著者は現時点における最適解を導き出すために「ディベート的思考」を個人(一人)の頭の中で行うということを「意思決定」のプロセスとして活用するよう提案しています。
本書は、前著と同様に京都大学で持たれていた「授業」の内容をまとめたものだけあって、非常に具体的に解説してくれていますが、次のような例えばなしを挙げながら、「ディベート」のスキル部分に終始することない「ディベート思考」を身に着けることによって「エキスパート」にとどまらずに「プロフェッショナル」を目指すべきだとしています。
「電動ドリルが良く売れている状況を見て『もっと高性能のドリルを売ろう』と考えるのがエキスパートであるならば、もっと根本的なとところまで考えて、『お客さんが欲しいのはドリルではなく穴である』と考えるのがプロフェッショナルです。」
「特定のテーマに対して賛否両論を自分の頭の中で整理することで根本的な理解にたどり着くことがディベートの本質で」とは言いますが、「言うは易し、行うは難し」であることを思い知らされます。