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武器としての交渉思考

2024年1月8日 CATEGORY - 代表ブログ

皆さん、こんにちは。

韓国ドラマの連続もののごとく、瀧本哲史氏の著作リレー読書が止まらなくなってしまった結果、リレー四冊目となりますが、「武器としての交渉思考」をご紹介します。

本書は、2012年に彼が京都大学で持たれていた「交渉の授業」の内容を一冊にまとめて出版されたものです。

まず著者は「交渉」とは、立場が異なる自由に意思決定できる二者が「合意」を目指してやり取りするコミュニケーションだと定義します。

そして、これが当事者の間で「合意」が結ばれることが前提になるので、すべての成立した交渉においては、かならず「ウィン・ウィン」の関係になっているはずだとも。

もちろん、両者のウィンとウィンの間でそのウィンの大きさの差(ビッグウィンとスモールウィン)はあるのは当然ですが、少なくとも「自由に意思決定できる二者」が「合意」に達したわけですからルーズは絶対にありえないという意味で。

もしそこにルーズがあるとすれば、それは「交渉」ではなく王様や上官が家来や部下に一方的にする「指令」というコミュニケーションになります。

著者は、今後、現存する人間の「仕事」の大部分がAIに代替されると予想される中で、「交渉」はコンピューターがどれだけ進歩したとしても代替されることはないと断言しています。

なぜなら、交渉という仕事においては「ロマン(夢や希望:主観)」と「ソロバン(時間やお金の計算:客観)」を両立させる必要があるからです。

当然のことながら、「ソロバン(時間やお金の計算:客観)」はコンピューターが最も得意とするところで、これに関わる仕事は今後は「誰でもできる仕事」として価値がどんどん下落していくことになります。

人間はこのコンピューターを利用していくわけですから、価値を生む唯一の源泉が「ロマン(夢や希望:主観)」ということになるわけで、これからの世界ではロマンとソロバンを結びつける「交渉」こそが人間がなすべき最も付加価値の高い仕事になるはずだということです。

本書には、このような「交渉」に関する概念的説明とともに、実際の「交渉」において上記の通り、できるだけビッグウィンを得るように進めるためのスキルについても具体的に解説してくれています。

ここで重要なのは、そもそも交渉の目的を「自分の主張をなるべきたくさん言って相手より多くの取り分を取ること」にしてはならないということでした。

そうではなく、あくまでも交渉の目的は「できるだけ相手の立場に立って相手の利益を実現した上で自分の利益の最大化を図る」ことで、(パイを奪い合うことではなく)両者が得られるパイを最大化した上で自分を有利にすることだということです。

そのために必要なこととして、交渉の「事前」と「最中」に求められるの二つのスキルについて詳解してくれていました。

以下、その二つをご紹介します。

まず「事前」スキルとしては、自分自身にとって不合理な合意を避けるために、「複数の選択肢を用意」しておくこと。そして、その選択肢の中で最も有利なものをこの交渉での合意が上回ることができるかという視点を持って交渉を始めるということ。

そして、交渉「最中」のスキルとしては、立場の違いから生じる相手にとっては大きな利益だけど、自分にとってはそれほどでもないというギャップを見つけるために交渉の最中にできるだけ相手からその情報を聞き出し、それをもとに有効な譲歩を提示することです。

まあ、誰もが交渉をするにはこのことを無意識に行っているのだと思いますが、それのことを最大限に意識した上で、「準備」「活用」することが重要だと本書によって気づかされました。

そのことを確認できただけでも、本書はとてもお得な一冊だったと感じております。

 

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