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無罪を見抜く

2022年1月5日 CATEGORY - 代表ブログ

皆さん、こんにちは。

現役弁護士による「無罪請負人」、元検察官による「ナリ検 ある次席検事の挑戦」と続いてきたので、最後に法曹三者の残りの一つである裁判官の立場から見た「刑事事件とは何か」についての一冊を読みたいということで見つけた一冊を今回はご紹介します。

タイトルは「『無罪』を見抜く」、著者は元東京高裁判事でキャリアの中で30件もの無罪判決をしてそのすべてが確定しているという実績をもつ木谷明氏です。

本書より、裁判官の側から見た「刑事事件」がどのようなものかの理解に直結すると思われる、日本の裁判官を三類型に分け、それぞれの実態を明らかにされた木谷氏の言葉を以下に要約します。

「裁判官には3つのタイプがある。一つは『迷信型』。捜査官はウソをつかない、被告人はウソをつく、と頭から信じているタイプで3割ぐらいいる。2つ目はその対極で『熟慮断行型』。被告人のためによくよく考え、最後は『疑わしき』の原則に忠実に自分の考えでやる人で、これは多めに見積もって1割いるかいないか。3つ目は中間の『優柔不断・右顧左眄型』。この6割の人は『こんな事件でこういう判決をしたら物笑いになるのではないか』『警察・検察官から、ひどいことを言われるのではないか』『上級審の評判が悪くなるのではないか』と、決断できず、結局、検事の言う通りにしてしまう。裁判官にはこういう体質的な問題がかなりある。」

「迷信型」が3割も存在するというのは非常に恐ろしいことではありますが、今までの二冊を読んだ後にこのような裁判官の実態について聞かされると、現実はこんなもんかと思いつつも、少なくとも理想形である「熟慮断行型」が1割でも存在するという事実には少なからず希望も持たされた気がします。

前回の検察官同様、裁判官経験者が公にその職に関して何かを語ることはほとんどなく、固く沈黙を守るというのが一般的である中で、このような事実が著者の口から語られたことは非常に貴重なことだと思います。

また、著者は自らが理想的なマイノリティーであり続けられたその根拠として、「愚直」「鈍重」そして「馬鹿正直」という自らの性質をあげられています。

この言葉を聞いて私は以前にこのブログで取り上げた恩師 村田和彦先生のことを思い出しました。

どれだけ米国資本主義のメリットが絶賛されていた今から20年前にも頑なに「ステークホルダー」全体の最大幸福が経営学原理だと言い続けていた村田先生からのはなむけの書が「愚直」でした。

そして、資本主義の行き過ぎによる格差拡大の問題を解決するために「ステイクホルダー資本主義」への転換が堂々と叫ばれる世の中になりつつある2022年の現実を思うと、これらの性質の重要性に改めて気づかされます。

つまり、「愚直」とは変わらないもの、すなわち「真実」に通じるものなのだということなのでしょう。

 

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