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TOEICが大学入学共通テスト撤退

2019年7月8日 CATEGORY - 代表ブログ

皆さん、こんにちは。

2020年に開始する大学入試改革の目玉である大学入試共通試験の英語における民間試験導入に関しては、このブログでもう何度も批判的な記事を書いてきました。

直近では、「民間試験をめぐって学識経験者らが共通試験への民間試験の利用を中止するよう国会に請願した」との記事をご紹介したばかりでした。

そして、先日(2019年7月3日)、驚くべきニュースが飛び込んできましたので、日経電子版の記事をご紹介します。

「大学入試センター試験の後継となる大学入学共通テストに採用される英語の民間試験で、認定された7団体8種類の試験のひとつである英語能力テスト『TOEIC』が2日、参加を取りやめると発表した。受験から成績提供までの日程など、参加を決めた時点ではセンター側から示されていなかった要望に対応できないと判断した。民間試験活用に向けた拙速な進め方が露呈した形だ。『大学入試センターから示された課題を全て解決する方法を見いだせなかった』。TOEICを運営する国際ビジネスコミュニケーション協会の担当者は、共通テストからの離脱を決めた理由をこう話す。」

この問題には一言では指摘できないほど多くの不合理な点がありました。

その最も大きな不合理が、いくつもの異なった民間試験の結果を「換算」によって一つの土俵に乗せることでした。今まで、日本の大学入試、特にセンター試験を含む国立大学が関連するものについては、世界で最も公平で公正なものでありました。

また、一点の上に何人もの受験生が乗っていてしのぎを削るということが前提の非常に厳しいものです。

それを、それぞれに構造も評価方法もそして目的も異なる試験を「換算」によって統一的な評価の対象とするような今回の制度設計については、その公平・公正性を一気に台無しにしてしまうものと考えられました。

それでも、今までにない英語試験を導入する必要があると考えるのであれば、大学入試センターが自らその目的にかなう試験を開発するというのが筋であるはずです。

しかも、TOEICには他の試験と異なり以下のような特殊な事情もありました。

「TOEICは共通テストに参加する8試験の中で唯一、『聞く・読む』(L&R)と『話す・書く』(S&W)の試験を別々に実施している。2つの試験は申し込みも別で、試験日や結果提供の時期も異なる。共通テストでは『読む、聞くなどの4技能を1回で評価する』とし、2試験の日程を近づけるなど一体的な運用が求められる。TOEIC側は運営システムの大幅な変更が必要で、会社員など年間約120万人が受験するTOEICの運営全体に大きな支障が出る可能性があると判断した。協会幹部は『当初は2つの試験の成績を足してセンターに提供すれば問題ないと考えていた』と打ち明ける。一方でセンターは『当初から一体運用を求めていた』としており、意思疎通の甘さもあったとみられる。」

おそらく、今回のTOEICを運営する国際ビジネスコミュニケーション協会は、私もその一人ではありますが、この制度の限界について強い批判を加える専門家が一定数いる状況の中で、大学受験という受験生の人生が大きく左右されるような厳密な試験として自らをの試験を機能させることに対して、責任の大きさを改めて認識された結果なのではないかと推測します。

文部科学省が、TOEICを、民間試験として認定された複数のテストの中で「主役級」に位置付けていたことは間違いありません。

その主役が自ら撤退を表明したわけですから、制度の設計者として真剣にこの問題の進むべき道を考え直すべきではないでしょうか。

ただ、この文科大臣の会見を見ているとほとんど他人事で、その可能性は残念ながら低いように思います。

(該当箇所:6:11~9:20)

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