おすすめ書籍紹介

日本語が亡びるとき #196

2018年10月8日 CATEGORY - おすすめ書籍紹介

【著者】  水村 美苗

【出版社】 筑摩書房

【価格】  ¥1,800+ 税

【購入】   こちら

著者の水村美苗氏は、12歳から大学院までをアメリカで過ごしたいわゆる「帰国子女」であり、そのアメリカ滞在中ずっと日本という国に対する望郷の念にかられ続けた経験を持たれる小説家です。

そういった意味では、英語を「仕方なく」学び、使ってはいるけれども、あくまでも心は常に日本語に向いている人生を送ってきた人であると言えると思います。

そんな人が、ひょんなことから、世界各国の英語を母国語としない「小説家」がアメリカの大学に集まって共同生活を行うという境遇におかれ、改めて「自らの言葉」について深く考える機会を持ったところから本書は始まります。

民族として長く過酷な歴史を歩み一度失ってしまった「自らの言葉」であるヘブライ語を、その不自由さを忍んでも、再び復活させ、次世代の「母語」にまで引き戻したユダヤ人。

デンマークの支配によってデンマーク語を「書き言葉」として強制された経験を持ち、解放後、よりデンマーク語の影響の少ない言葉、より民族の話し言葉に近い地方の方言をあつめ人工的な「書き言葉」として作った「ニーノシュク(新しいノルウェー語)」を作ったノルウェー人。

彼女が出会ったこれらの言語的背景を持つ作家の「自らの言葉」に対する姿勢は、言葉の存在意義が「通用性」「利便性」だけではないということを明確に示しています。

著者は本書を通じて、#195「英語の帝国」の関連ブログで書いたように、グローバル社会の目指すところであるはずの「多様性」の保持が言語においてだけは「例外」とされるようなゆがんだ流れに乗らない努力の必要性、いや「自らの言葉」でものを考えたいという精神の必然性を再認識する必要性を伝えてくれています。