英語史で解きほぐす英語の誤解 #250
2021年4月11日 CATEGORY - おすすめ書籍紹介
【書籍名】 英語史で解きほぐす英語の誤解
【著者】 堀田隆一
【出版社】 中央大学出版部
【価格】 ¥880 + 税
【購入】 こちら
本ブログでは、言語の「考古学」的側面を中心に書かれた本を何冊もご紹介してきましたが、その中でも「最も」と言っていいほど、言語研究における「考古学」的思考の大切さを教えてくれる一冊です。
というのも、「言語」は私たち自身が普段から使用している最も身近なものでありながら、形のないものです。
「いや、文字があるではないか」ということで、通常の「言語学」といわれるものについては、当然その文字を中心に研究がすすめられます。
ですが、「言語が文字として残っている」という例は、一部、中国や古代エジプトなど一部の例外はありますが、実は人間の長い歴史を通してそんなに古くまではさかのぼることができないのも事実です。
そうなると、言語の本質は、文字通り「形のないもの」ということになります。
このようにとらえると、言語学は、その限界というものに直面しやすい学問であることが分かります。
本書ではそのあたりのことを以下のように表現しています。
「生物の系統関係の究明にはDNAという動かぬ物質的証拠があるが、言語の系統にはDNAに対応するものはない。英語がラテン語やフランス語の語彙を大量に借用している事実を指して『英語派表面的にはイタリック系だが、根っこはゲルマン系だ』などと言う時の『根っこ』が何であるかは実はよく分からない。これが、生物と言語の大きな違いだろう。」
それでも、本書は「考古学」的思考を駆使しながらその限界を飛び越える言語学のダイナミックさというものを見せてくれています。