
英語教育幻想 #193
2018年9月9日 CATEGORY - おすすめ書籍紹介
【著者】 久保田 竜子
【出版社】 ちくま新書
【価格】 ¥820 + 税
【購入】 こちら
本書は、#189の「これからの英語教育の話をしよう」の中で取り上げられている文科省による「英語学習の目的」の変更にともなう課題を多数とりあげ、これでもかというくらいに厳しい議論を展開しています。
内容としては、指導要領によって「英語学習の目的」が、「欧米の言語である英語を通しての欧米の文化」の理解から、「国際共通語たる英語を通しての世界の文化」の理解へ変更されるという革命的変更がなされたにもかかわらず、日本における英語に対する姿勢は「欧米の言語である英語を通しての欧米の文化」の理解を目指すものから離れられず、そのことによって生じるいくつもの事象を「幻想」という言葉を使って厳しく指摘しています。
その指摘があまりに厳しいので、読み始めのころは、少しヒステリックに過ぎるような、反論のための反論ともとれるような押しつけがましさを感じざるを得ませんでした。
しかし、それでも読み続けていくと、それら一つ一つの批判が具体的な事象とともになされることによって、次第に共感させられる部分が増えてくるという不思議な感覚を得られました。
最終的には、私たちに、英語という言語に対して意識下、それもかなり深い部分で思い込んでいる「幻想」に気付かせ、それを問題視させてくれることで、「これからの英語教育」の本来あるべき方法へ進むきっかけにつながるくれる可能性のある本だと感じました。
文責:代表 秋山昌広