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英語民間試験導入の国立大学における決着

2019年6月3日 CATEGORY - 代表ブログ

皆さん、こんにちは。

このブログでは今まで、英語民間試験導入の国立大学における混乱について東京大学の動きを中心に継続してお伝えしてきました。

先日(2019年5月31日)の日経電子版にこの問題の「最終決着に関する記事」がありましたのでご紹介します。

「2020年度に始まる「大学入学共通テスト」に導入される英語の民間試験で、文部科学省は31日、国立大全82校のうち、東京大や京都大など難関校を中心に3割の25校が、英検準2級(高校中級程度)相当以上を出願資格にするとの調査結果を公表した。東大は「住む場所や経済状況で差が出る」などとし、能力を証明した高校の調査書の提出でも認めるとした。熊本大など13校は英検3級(中学卒業程度)相当の「A1」以上を出願条件にした。北海道大や東北大などは利用を見送る。民間試験の成績を点数に換算し、共通テストで実施する従来型マークシート試験に加点するのは33校あった。このうち筑波大は「グローバル化に備えた4技能習得は重要で、特に優れた人に加点する」としている。」

この結果は、国立上位校のほとんどは良識に従い、強制された条件の中でぎりぎりの決断をしながら、本来あるべきところに近づけたものだと考えられます。

私は、こころからその勇気をたたえたいと思います。

そして、この勇気ある行動は、東京大学の先陣の切り方から大いに影響を受けたものだと考えられます。

一点の上で何十人、何百人が争う厳密な試験の運用により、世界で最も公平で公正な試験を維持してきた日本の国立大学が、試験の難易度も形式もばらばらの外部試験を「点数換算」して一つの土俵に上げるなど、受験生をバカにしすぎていますし、今までの厳密な試験の運用を崩壊させる可能性の高いものでした。

ですが、今回多くの国立大学は、「英検準2級(高校中級程度)相当以上を出願資格にする」ことによって、その可能性を限りなくゼロにすることに成功したのだと思います。

なぜなら、国立大学上位校を受験するような受験生にとっては、英検準2級の合格のためには、そのための準備なしの一回のみの受験で確実に合格することができるはずだからです。

それによって、その足きり、もしくは加点を意識することでその試験への「慣れ」のために何度も受験できる裕福な学生とそれができない学生との間の不公平さを排除できます。

様々なツッコミどころがある文科省の決定ですが、このポイントをとらえただけでも、あり得ない方針でした。

それを、制度に対して逆らうことなく、学生の負担や不公平さを最小限に抑えることに成功したのですから、さすがだと言わざるを得ません。

しかし、このあり得ない制度は維持されます。

そして、私立大学としては、自校の問題作成負担を緩和するために、この制度に便乗するところは増えると考えられますので、問題の根本的な解決はまだ先だと思っています。