なぜ世界には「右から左」と「左から右」の文字が存在するのか
2023年11月5日 CATEGORY - 日本人と英語
書籍紹介ブログにてご紹介した「教養の語源英単語」からテーマをいただいて書いてきましたが、第四回目の今回で最終回です。
最終回のテーマは「世界の言語における文字の書く方向」についてです。
「ラテン文字(ローマ字)」を使うヨーロッパ言語は、主に左から右へ横書きです。
それぞれ「アラビア文字」、「ヘブライ文字」、「シリア文字」を使う言語は、主に右から左へ横書きです。
中国語、そしてその中国語に強い影響を受けた韓国語や日本語は縦書き(上から下)で書きつつ、右から左に進んでいきます。
もちろん、今はこの三カ国語とも西欧の影響を強く受け、左から右へ横書きすることも一般的になっていますが、少なくとも日本語では国語の時間には本来の形で書くことを強制されます。中国語や韓国語も強制されるかどうかは別として、併用が認められていることは確かです。
モンゴル語は、縦書きで書きつつ、逆に左から右に進んでいきます。そして、現代でもそれを堅持しているようです。
このように、世界の言語における「文字の書く方向」はまさに多種多様ではあるのですが、そのような方向に書くようになった理由にまでには今まで思いがいくことはありませんでした。
しかし、驚くべきことに本書にはその「なぜ」に向き合った箇所がありましたので以下ご紹介します。
「一般的に文字はラテン文字のように左から右に横書きするのが自然な書き方である。ほとんどの人たちは右利きのため、ペンをもって文字を書くときにインクが手につかないようにするためだが、なぜアラビア文字(ヘブライ文字、シリア文字)は逆なのだろうか。それはアラビア文字の起源がエジプトの象形文字であったことに関係しているようだ。石板に掘られる象形文字は、ノミを左手に持ち、右手に持ったハンマーでたたくことになる。ノミを右に傾けて、その尻をハンバーでたたけば左方向への力が加わるので、そのまま左に進んだ方が楽になるわけで、この習慣が現代にも受け継がれているという説だ。」
いや~この理由、本当に納得感が高いと思いました。
ただ、私たちにとってより重要な日中韓の三カ国語にモンゴルを加えた四つの理由までは書かれていません。しかも、私は次のような経験を通じてこの件については大いなる疑問を持っています。
皆さんも同じ経験をお持ちだと思うのですが、小学校の国語の時間だけ、右手の側面が鉛筆で真っ黒になってしまいましたよね。算数や理科社会などはそんなことないのに国語の時だけ。
上記の理由を適用しようとすれば、日本語の国語だからこそ、逆にそれは回避されてしかるべきではないかと思うのですが、実際には日本語の国語の時だけこの不合理が生じるのはおかしいではないかという疑問です。
と悩み始めたところで気づいてしまいました。
日中韓そしてモンゴルも、かつての筆記用具は「ペン」ではなく「筆」だったということに。
筆を使って書くときは手を紙に着けることはありません。
基本的にこれらの国では「本」というよりも「巻物」を歴史的に長く使用してきたはずです。そして、巻物は、右から左に進み、左へくるくる伸ばしていけば、ずっと書いていけるわけです。
つまり、日本を含むこの四カ国でもやはり、上記の理由は実に合理的に説明をしていることが分かりました。
その意味では、西洋化の一環として「筆」を「ペン(鉛筆)」に変えた時点で、もはや「書く方向」すらも西洋式に変更する覚悟を迫られていたのかもしれません。
その覚悟の不十分さを「手の汚れ」があらわしていると考えるのはまだまだ国語という教科に失礼というものでしょうか?