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コンテナ物語

2022年8月18日 CATEGORY - 代表ブログ

皆さん、こんにちは。

ずっと読みたいと思っていた本をようやく読了することができました。

その本とは、アメリカではあのビルゲイツ氏が、そして日本ではなかなか他者を認めない論破王として有名なひろゆき氏が、そろって大絶賛、しかもひろゆき氏に至っては人生で二番目に影響を受けた(ちなみに一位はこのブログですでにご紹介した「銃・病原菌・鉄」)と言われる「コンテナ物語」です。

この本を知ったのはだいぶ前だったのですが、読了までに時間がかかった理由を挙げるとすれば、本書が383ページにわたる大作の割に、「コンテナ」という実に平凡な存在を扱っているという、その「情報量の多さ」と「テーマ選択」のアンバランスさに戸惑ったことというのが正直なところです。

ところが、実際読んでみた結果、この「コンテナ」にまつわる物語は決して平凡なものではなく、むしろ超エキサイティングで、ゲイツ・ひろゆき両者の絶賛にも完全に納得させられてしまいました。

その感動を物語の概略で伝えられるはずもありませんが、できる限り以下にまとめてみます。

「コンテナ」にまつわる物語が始まったのは1955年なのですが、それまでの海上貨物輸送は「沖仲仕(おきなかし)」と呼ばれる日雇いの港湾労働者が基本的に貨物を人力で荷下ろしをするような極めて労働集約的で生産性が低い産業でした。

実際に、海上輸送にかかる全経費の7割以上が海上ではなく港での彼らによる荷下ろしに関わるものだったにもかかわらず、長い間このボトルネックに対する効果的な対策を考えつく人がいませんでした。

そこにマルコム・マクリーンという一人のトラック運送会社社長が「トラックから切り離したトレーラーごと船に載せてしまえばいいのでは?」という画期的なアイデアを1955年に思いつきます。

その後、彼は自らの運送会社を売却した上で次々と海運会社を買収していきます。そして、そもそものトレーラーごと積載するというアイデアでもまだ車輪のスペースが無駄になるため、それさえも取っ払ったコンテナ(箱)だけの積載というアイデアにバージョンアップさせました。

このアイデアは単に車輪のスペース分の節約にとどまらず、上に5段6段と積み重ねができるという当初想定していなかった圧倒的なメリットを生み出すことにつながりました。

これによって、輸送コストは実に従来式の37分の1という革命的な削減効果を生み出したのです。

彼はこの「革命」を実現するために必要なこと、例えば最も効率的に積載が可能となるコンテナと船とはどういったものかというまさにゼロからの創造を自らのリスクで実現していきました。

これによって、世界中の海上輸送業界は彼が作り出したこの「箱」による革命的変化を取り入れざるを得なくなって今に至るというわけです。

とはいえ、彼は海上コンテナという「箱」の発明者というわけではありません。実際に「コンテナ」という存在自体は彼がこのアイデアを思いつく何十年も前から存在していました。

しかし、その「箱」自体は海上輸送業界を一変させることはありませんでした。そうではなくて、彼が自らのリスクで構築した「システム」にこそ、その力があったということです。

このことは、スティーブ・ジョブズが、i-podという「MP3プレーヤー」を発明したことが「革命的」だったのではなく、「音楽を一曲ずつ買ってそれを全て持ち歩いて聴く」ことを可能にした i-Tunes という「システム」を音楽業界における権利問題の解決への努力によって構築したことこそ「革命的」であったことと同じように思います。

読む前の大きな期待を決して裏切らない素晴らしい一冊でした。

 

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