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失敗の本質

2021年7月20日 CATEGORY - 代表ブログ

皆さん、こんにちは。

どうしても気後れしてしまって手につかずに積読状態になっている本って誰にでもあると思うのですが、そんな一冊をようやく読了することができました。

それは1984年に刊行された「失敗の本質」という大東亜戦争における日本軍の失敗研究の本です。

私は軍事的オタクではありませんので、日本軍の失敗の研究そのものにはそこまで興味はありません。

それなのに、本書を手に取ったのは、この本が「(組織としての日本軍の失敗と捉え直し)これを現代の組織一般にとっての教訓あるいは反面教師として活用すること」を狙いとしているからでした。

また、本書の執筆者グループの中に以前にご紹介した「ワイズカンパニー」という名著をハーバード大学の竹内弘田高教授とともに書かれた一橋大学の野中郁次郎名誉教授がいらっしゃったこともあります。

とはいえ、手に取ってから5年以上たって積読状態を脱却できたのは、二年目に突入した新型コロナウィルスとの日本政府の戦いが大東亜戦争におけるそれとオーバーラップして見えてしまったことが大きな理由でした。

その視点で本書を読んで印象的だった部分を以下に引用したいと思います。

「大東亜戦争突入まで日本軍の組織はほぼ有効に機能していた。しかし、問題は危機においてどうであったかということである。すなわち不確実性が高く不安定かつ流動的な状況つまり軍隊が本来の任務を果たすべき状況において組織的欠陥を露呈したことだ。」

これは、近代的官僚組織としての日本軍が明治に作られ、日清戦争、日露戦争という二つの自らよりも強大な相手との戦争を「勝利」、もしくは少なくとも「不敗」で切り抜けることができたのは、まさにそれらを遂行する上で、たまたま「不確実性が高く不安定かつ流動的な状況」に陥ることなく、日本軍にとって「確実性が高く安定かつ固定的な状況」の中で戦況を維持することができたからにすぎないとの指摘です。

二回にわたる自らよりも強大な敵に対する「勝利」もしくは「不敗」という結果を、上記のようなたまたま得られた好条件下で実現できた事実を、無条件に過大評価してしまった結果、さらに強大な英米との戦いに進むことになり、当然の結果として「不確実性が高く不安定かつ流動的な状況」の中での戦いを強いられることによってその組織的欠陥が露呈してしまったということです。

そして続きます。

「日本軍は大東亜戦争というその組織的使命を果たすべき状況において、しばしば合理性と効率性とに相反する行動を示したことにより敗戦を導いたとみることができる。ところが、このような組織的特性や欠陥は戦後においてあまり真剣に取り上げられなかった。時々取り上げられたとしても、多くの場合、その原因は当事者の誤判断といった個別的理由や物量的劣勢に求められた。」

つまりこれは、大東亜戦争の敗戦を経てもその敗因が、近代的官僚組織としての日本軍が「不確実性が高く不安定かつ流動的な状況」において適切に対応することができない組織的欠陥を内蔵していたということに思い至らず、日本においては「近代的官僚組織」が組織としては理想的な形だと理解され続けてしまったという指摘です。

その結果、戦後の日本社会における一般企業も、ある程度の大きさに到達すると「近代的官僚組織」としての性格を帯びることになったわけですが、幸か不幸か本書が書かれた1984年までは「確実性が高く安定かつ固定的な状況」が継続し、以下のように組織的欠陥を露呈せずに済みました。

そして、次が本書において最も印象的な部分です。

「戦後、日本の組織一般がおかれた状況は、それほど重大な危機を伴うものではなかった。したがって、従来の組織原理に基づいて状況を乗り切ることは比較的容易であり、効果的でもあった。しかし、将来、危機的状況に迫られた場合、日本軍に集中的に表現された組織原理によって生き残ることができるかどうかは、大いに疑問となるところであろう。日本軍の組織原理を無批判に導入した現代日本の組織一般が、平時的状況の下では有効かつ順調に機能し得たとしても、危機が生じたときは、大東亜戦争で日本軍が露呈した組織的欠陥を再び表面化させないという保証はない。」

残念ながら、本書のこの指摘はみごと完璧な「予言」となり、本書が書かれた1984年以降、日本は数えきれないほどの「不確実性が高く不安定かつ流動的な状況」を経験することになりました。

1995年の阪神大震災、2003年のリーマンショック、2011年の東日本大震災、その後全国で毎年のように起こる大雨洪水被害、そして2020年の新型コロナウィルスのパンデミックと時代を追うにつれて「不確実性」「流動性」は高くなる一方です。

私たちはもういいかげん、「失敗」から目を逸らすことなくそれを教訓あるいは反面教師として活用する姿勢を持たなければなりません。

 

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