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COPの数字のプレッシャー

2021年11月15日 CATEGORY - 代表ブログ

皆さん、こんにちは。

先週、過去に自分が投稿した記事をタイムラインで流してくれるフェイスブックの仕組みがきっかけで「ネットフリックスの革命」の記事を書きました。

今回流された記事は、8年前の今日書いた「世界に突き付けられた演説」という記事です。

8年という歳月を経た今、この記事を今年行われた「COP26」に関するニュースと対比させて、新たな記事を書いてみたいと思います。

(今回はかなりの長文になりますがCOPの始まりから今までの流れが概観できるようになっていますので最後までお読みいただけると幸いです。)

テーマは、COPのあとにつく数字のプレッシャーについてです。

まず、簡単におさらいしておきますと、COPとは一年に一度開かれる「国連気候変動枠組条約締結国会議」の「条約締結国会議(Confference Of Parties))」の頭文字をとったもので、その後の数字はそれが何回目かということを表しています。

ちなみに、二酸化炭素等の温室効果ガスの排出削減目標を定めた「京都議定書」はCOP3で採択されたものです。

先日(2021年11月1日)のニュースピックスの記事に、このCOPの歩んだ歴史が分かりやすくまとめられていましたので引用します。

「温暖化対策の道のりは迷走そのものだった。1997年のCOP3で京都議定書が華々しく採択されたものの、2009年のCOP15コペンハーゲン会議では、米国など先進国と、中国など新興国の利害が一致せず、ひどい喧嘩別れに終わるなど、もたついている間にCO2濃度は一気に400ppmを突破してしまった。気候科学の進化で、まさに『世紀末』な壊滅的な予測も現実味を帯びるなか、ようやく世界が一致点を見いだしたのが、2015年12月にパリで開催されたCOP21だった。米中を含め、参加196カ国が会期を大幅延長して議論を重ねて採択した通称『パリ協定』は、細かい問題はたくさんあったにせよ、世界の気候対策の行方を一気に決定づけた点で画期的だった。パリ協定が定めた内容は、大きく2つだ。ひとつは、世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べてプラス1.5℃に抑える努力をする。もう一つは、そのために21世紀中盤には、カーボンニュートラル(温室効果ガス排出実質ゼロ)を目指す。日本でも、昨年、菅義偉前首相が宣言してから『2050年までのカーボンニュートラル』や『脱炭素』という言葉が浸透し始めたが、これらの用語や取り組みが世界的に広がったのは間違いなく、パリ協定に端を発している。パリ協定のおかげで、世界は少なくとも前進した。2014年までの状況は、今世紀末までに4℃近い上昇に向かっており、これは干ばつ、洪水、熱波などの異常気象だけなく、食糧生産でも破滅的な結果をもたらすとみられていた。パリ協定に前後して、再生可能エネルギーの急速な普及もあり、ようやく温室効果ガスの排出曲線は少しだけ緩やかになり始めたが、現在のところ各国の2030年までの目標を積み上げると、2.7℃の上昇が見込まれているのが現実だ。」

このように、COPが歩んできた歴史を見てみると、4℃から2.7℃の上昇と結構いい感じに抑えられてきているように思えるのですが、これでは「ダメ」なようなのです。

というのも、今年のノーベル物理学賞を受賞する真鍋淑郎氏が礎を築いた気候科学の進展によって、この「プラス1.5℃に抑える」ことができるかどうかが、人類の存亡のために極めて重要な要件となることが分かってきたからです。

そこで、今回のCOP26は、世界全体としてこの「1.5℃」を何としても達成するという合意ができるかどうかが決まるとても重要な回だと目されていました。

では、その重要なCOP26の成果を2021年11月5日と11月10日の読売新聞の記事から引用します。

「(2021年11月5日)英グラスゴーで開催中のCOP26で4日、40か国以上が石炭火力発電の廃止を目指す声明に合意したことが明らかになった。これまで石炭火力の全廃を宣言していた英仏などに加え、ポーランドやベトナムなど18か国が新たに『脱石炭』を宣言した。先進国は2030年代、途上国は2040年代までに石炭火力の建設や新規投資を停止することで合意した。英政府は署名した国や組織のリストを公表していないが、日本、中国はもとより米国、豪州そしてインドなども署名を見送ったという。」

「(2021年11月10日)COP26で10日、24か国がガソリン車など内燃機関を使った自動車の新車販売を、主要市場で35年、全世界で40年までに停止することに合意したと発表した。英国のほかスウェーデン、カナダ、チリなどが参加。米ゼネラル・モーターズや独メルセデス・ベンツなど自動車大手6社も賛同した。日本や中国、ドイツといった国は参加していない。米国は国としては参加していないが、カリフォルニア州などが賛同した。」

この二つの記事を見るに、議長国である英国をはじめヨーロッパ諸国が、なんとか脱炭素化を前に進めたいという強い思いでCOP26を引っ張り、「宣言」や「合意」という具体的な成果を出すに至ったわけですが、実際に排出量が多い国が「現実問題」から、その成果を条件付きのものにしてしまい、世界の総意としての「成果」には程遠いものになってしまったという印象が強いです。

最終的にCOP26は石炭の扱いを巡る交渉などが難航し、12日までとなっていた会期を延長し、13日も交渉を続けましたが、最終的に以下のような合意で落ち着きました。

11月13日(現地時間)の読売新聞の記事

「合意文書には、排出抑制対策を講じていない石炭火力について『段階的な削減に向けた努力を加速する』などと記載された。各国は、温室効果ガスの排出削減量を国際的に取引するルールにも合意した。先進国と新興国で対立していた過去のクレジットを国際的な枠組み『パリ協定』に移管するかについては、2013年以降に出されたクレジットに限って移管を認めるとした。」

会期延長の末、何とか全体合意を実現した形ですが、議長国である英国が起案した「廃止」案からかなり後退した「削減」という形での合意であることは間違いありません。

実際に、石炭火力の宣言がなされた日の翌日、スウェーデンの環境活動家グレタ・トゥンベリさんもグラスゴーで行われた大規模な抗議デモで各国首脳に対して「COP26は失敗だ」とする批判演説をしました。

実際私も、我が国日本がこの重要なCOP26において、「石炭」と「内燃エンジン車」の両方の問題に対して後ろ向きな態度をとったことにショックを受けざるを得ませんでした。

読売新聞は、日本をはじめとする「現実問題」に直面する国々がそれぞれの廃止合意に参加できなかった背景を以下のように説明しています。

「日本は再生可能エネルギーの普及が道半ばで、原子力発電所の再稼働も進まず、10月に2030年度に総発電量の19%を石炭火力で発電することを盛り込んだエネルギー基本計画を閣議決定したばかりであり、議長国英国をはじめとする欧州勢との立場の違いが浮き彫りになっている。というのも、日本は災害や事故で電力不足に陥っても、欧州の様に近隣各国から電力の融通を受けることができないため、エネルギー基本計画では再生エネが主力電源となるまで、電力を安定供給するための調整力として石炭火力を活用するしかないというのが本音だ。ただし、日本ではCO2の排出量が従来と比べて少ない高効率の石炭火力が全体の半分を占めており、しかも非効率な石炭火力の9割弱を休廃止の対象とする計画である。中国とインドは現状は石炭火力に依存割合が多く、急激な転換は困難であるとして、そしてアメリカも発電部門のCO2排出量を2035年までに実質ゼロとする目標を掲げながらも、天然ガス価格の上昇を受けて石炭火力の利用が増えていることから今回の声明には加わらなかった。」

また、先進国と途上国の「クレジットに関する対立」についてもその背景を同じく読売新聞の記事から引用します。

「クレジット(削減量)の取引は、先進国が途上国に温室効果ガスを減らすため技術支援や資金援助を行った場合、減った量の一部を先進国側の削減量として計上できる仕組みだ。2015年のCOP21で採択された国際的な枠組み『パリ協定』の条文に盛り込まれたが、具体的なルールは合意できておらず、今会議の主要議題の一つだ。意見の隔たりが大きいのが、1997年に採択された京都議定書の枠組みで発行されたクレジットをパリ協定に移管させて、今後の使用を認めるかだ。クレジットを持つブラジルやインドなど新興国は、移管されなければ、市場で得られるはずの資金が失われると懸念。一方、米国やEUは、移管を認めれば、実際の排出量の削減が進まないと反対していた。」

以上の流れを概観すると、産業革命前からの「プラス1.5℃」および2050年までの「カーボンニュートラル」を達成するという「長期的」な目標には世界中が同意していても、それを達成するための「短期的」な目標での同意は一筋縄ではいかず、あくまでも「折衷」的な合意になったと言わざるを得なさそうです。

しかしながら、「長期的」な目標はあくまでも「短期的」な目標の積み重ねでしかありません。

そして、COPの後にくる数字は確実に一年で一つ増える一方、2050年までに残された年の数は確実に一つずつ減っていきます。

なんとかして、COPのあとにつく数字のプレッシャーをプラスの力に変えてほしいと強く願います。

 

~最後に、動画のご紹介を一つ~

前回の記事では「世界に突き付けられた演説」としてフィリピンの国連代表のスピーチをご紹介しましたが、今回のCOP26でも「世界に突き付けられた演説」が生まれました。

それは南太平洋のツバルから同国外務大臣のメッセージです。それに関する同国国連代表の「Tuvalu is literally sinking.」という衝撃的なコメントと併せての動画をご覧ください。

 

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