英語の品格 #272
2022年5月15日 CATEGORY - おすすめ書籍紹介
【書籍名】 英語の品格
【著者】 ロッシェル・カップ 大野和基
【出版社】 インターナショナル新書
【価格】 ¥700 + 税
【購入】 こちら
私が考える日本人の英語に対するあるべき姿勢とは、言語の基本である文法をマスターした後、必要に応じて語彙を身に着けること、そしてそれらを組み合わせて「英語を使う」ということを繰り返すことです。
しかし、本書の著者である経営コンサルタントのロッシェル・カップ氏は本書の冒頭で次のような理由からそれではダメだと言っています。
「アメリカの学校における外国語教育はあまり充実していないので、ほとんどのアメリカ人は外国語を身に着けられません。そのため、外国語を話す難しさを十分理解できないし、英語を母語にしない人の立場に共感できないのです。結果として、相手が外国人であっても、英語のレベルが高いか低いかでその人を判断するので、英語が上手でなければその人自身の評価が下がってしまうことがあるのです。」
これは現時点では当てはまらない指摘です。
というのも、少なくとも現時点においては、その英語を話す日本人がどのようなスタンスでアメリカ人に対して接するのかという視点が欠けた非常に狭い条件下での話だからです。
現在英語でビジネスをしようとしている日本人のうちどれくらいの人がアメリカ人ビジネスマンと全く同じ土俵で英語を話す必要性があるでしょうか。
例えば、アメリカの弁護士事務所でアメリカ人のクライアントを相手にアメリカ国内の法律問題を扱わなければならない立場の日本人であれば、それはその通りでしょう。
しかし、アメリカの企業からモノやサービスを日本企業の担当者として買う場合はもとより、アメリカの企業のそれにはない価値を持っているモノやサービスを売る場合、日本人のビジネスマンがすべきことをはその「価値」を何とか英語を伝えることができれば十分なわけです。(マイナー文化の価値については以前の記事「母国語が国際語なのは幸福なことか」をご参照ください。)
ですが、あくまでも「現時点では」ということであり、「これからは」もしかすると当てはまらなくなる可能性を否定できなくなるという危機感を最近私自身感じることがあります。
というのも、韓国企業の躍進を見ても分かる通り、経済のグローバル化は10年前と比べても格段に進んでいます。そして、日本企業の存在は相対的に低下する一方です。
その意味で言うと、私たち日本人はアメリカ人と同等の英語力は無理でも、他の非英語圏のビジネスマンの英語との競争という視点くらいは意識して、もう一段上の目標設定が必要になっているのではないかとも感じることもあります。
とは言え、変な焦りは禁物です。
あくまでもこれは段階的なことであって、一足飛びに何ができるわけでもありません。
本書によって気づかされたことを意識しつつ、着実に英語学習を継続していくことが何よりも大切であることに変わりはありません。