
続・コミュニケーション能力とは
2023年3月12日 CATEGORY - 日本人と英語
書籍紹介ブログにてご紹介した「英語と日本人」からテーマをいただいて書きていますが、今回の第七回目で最終回です。
最終回のテーマは「コミュニケーション能力の定義」です。
実は、このテーマでは今から10年以上も前に「コミュニケーション能力とは」という記事にてその定義の中の一つの要素である「方略的能力」を中心に書きました。
ただ、本書ではそれ以外の能力を含めその定義を網羅する四つの能力について具体例を示しながら分かりやすく書かれていましたので、前回に続いて紹介したいと思い、タイトルを「続・コミュニケーション能力」とさせていただきました。
以下に、その四つについて本書より引用します。
◆文法的能力(Grammatical Competence)
文法的能力とは、文法、語彙、発音などの言語知識で、いわばコミュニケーションを支える土台にあたる力。
◆社会言語学的能力(Socio-linguistic Competence)
社会言語学的能力とは、社会的ルールを踏まえて状況に応じた適切な表現を使い分ける能力で、例えば採用面接で「オレこの会社、すきっすよ」と言ったら非常識だとして落とされるということを知っていること。
◆談話能力(Discourse Competence)
談話能力とは、話の流れの中でメッセージを適切に理解する能力のこと。例えば「ぼくキツネ」という発言は、演劇の準備中なら「キツネの配役」を示すが、食堂での話なら「キツネうどん」だと理解できる力。
◆方略的能力(Strategic Competence)
方略的能力とは、コミュニケーションが円滑にいかなかった場合でも、つなぎ言葉や言いかえなどによって対話を続ける能力である。例えばuncle(おじさん)という言葉が分からなければmy father’s brotherなどと言い換えて意図を伝える力で、絵やジェスチャーでメッセージを伝える能力なども含む。
説明に過不足がなく非常に分かりやすくまとまっていると思います。
また、実際のコミュニケーションの場面では、さらに相手の表情や目線、声の調子、場の空気感、相手との関係性の強弱(忖度や打算)などを洞察してメッセージを交換する高度な能力が必要とされ、握手やハグなどの身体的接触、食事や宴会などの社交的要素もコミュニケーションに大きな影響を与えることを知っておくことも重要だと著者はそれに加えています。
昨今、高校入試や大学入試でスピーキングテストの導入が取りざたされていますが、コミュニケーション能力を測定するテストを本当の意味で作ろうと思ったら、この定義に当てはまる4つの要素をすべて網羅することが必要となることを忘れてはなりません。
そのため、それが可能なのは今のところ生身の人間以外ではありえないということが自明かと思います。