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アップルが大量解雇しない理由

2023年2月11日 CATEGORY - 代表ブログ

皆さん、こんにちは。

アメリカにおける極端なインフレを抑えるための度重なる利上げによって今後景気が悪化するとの予測に基づき、今まで圧倒的な成長を続けてきたGAFAMのほとんどの企業がここへきて大量解雇を行っていることは日本でも周知の事実だと思います。

ただ一社を除いて。

その一社がアップルであり、大量解雇を行わずに他社とは明らかに一線を画している理由について解説したブルームバーグによる記事を読みました。

そもそも大前提として、私は一度人を雇ったら経営環境のいかんにかかわらず基本的に解雇することができないという日本の雇用慣行には労働力の流動性を阻害する非合理的な部分があるという考えを持っています。

なぜならこれによって、「企業の活性化」と「労働者自身の能力を社会の必要性に適応させること」の両方が阻害されてしまうからです。

この「労働力の流動性の疎外」の問題については、以前の「人口減少に負けない思考法」の記事でも指摘しました。

しかしながら、「労働力の流動性」が担保されたアメリカ企業を代表するグーグル、アマゾン、フェイスブック、マイクロソフトなどが何万人という単位での大量解雇したとのニュースが毎日のように報道されるのをみると、これもまた本来あるべき労使関係であるとはとても思えません。

どうしたらその両方をバランスできるのかと考えていたタイミングでこのブルームバーグの記事が目に留まったのです。

以下、この記事を要約します。

「景気減速で米ハイテク業界に人員削減の波が押し寄せる中、アップルにかかる圧力が同業他社に比べて低いのには理由がある。そもそも、効率的な採用を行ってきたからだ。新型コロナウイルス禍を背景とした採用ラッシュが続いていた時期も、アップルは他の大手ハイテク企業に比べて人員の規模を拡大させなかった。さらにブルームバーグがまとめたデータによると、新入社員1人当たりの売上高でアップルは同業他社を大幅に上回っている。そうした慎重なアプローチが今、実を結びつつある。アップルも研究開発以外の分野など一部では採用を凍結しているが、他のGAFAMで進んでいるような大規模なレイオフには至っていない。多くのハイテク企業はコロナ禍中に需要増を見込んで採用を増やし過ぎたことを認めている。2020年から22年にかけて従業員数はアルファベットで60%増加し、アマゾンではほぼ倍増した。これに対し、アップルは20%増にとどまった。これはアップルの経営陣が株主からの資金をどう管理し、どんな成長機会に投資すべきかしっかり見極めていることに他ならない」

経営環境の変化への労働力の変動性を全く無視した超硬直的な日本企業と経営環境の変化への対応に関わるリスクをすべて労働者に負わせるアンフェアなGAFAMのどちらの労働慣行が優れているかと問われても、ここまで極端に振れてしまってはとても二者択一できるものではありません。

その中で、このような株主と労働者の両方のリスクのバランスをとるアップルの経営の実情を知ることができたことによって、今後の日本企業の進むべき道を指し示されたような気がして非常にポジティブな気持ちになることができました。

 

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