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偉大な企業の崩壊

2014年10月8日 CATEGORY - 代表ブログ

ビジョナリーカンパニー

 

 

 

 

 

 

 

皆さん、こんにちは。

先日ご紹介した「ビジョナリーカンパニー2飛躍の法則」はジムコリンズ氏の有名な「ビジョナリーカンパニー」の続編として非常に大きな期待をもって読んだのですが、その大きな期待を裏切らない非常に素晴らしい本でした。

そのため、第二弾の読後すぐにその勢いでシリーズ第三弾(おそらく完結編)「ビジョナリーパンパニー③衰退の五段階」を読むことにしました。

正直に申しまして、前二作と比較して本作は、インパクト不足の感じがどうしても否めない内容となっているように感じました。ただし、著者の名誉のために言いますと、それはシリーズものの後半にありがちな著者の「手抜き」とか「マンネリ」が原因ではないと思われます。

そうではなくて、そもそもその原因が、前二作で達成しようとした目的と比較し、本書の目的が根源的に困難なものだという点にあるのだと思います。

本書の目的とは、「強大な組織(前二作でいうところの「偉大な企業」)がいかにして衰退するのかという問いに対して回答すること」です。

それではなぜこの目的が根源的に達成困難なのかという問いには、著者自らが本書で引用しているトルストイの「アンカレニーナ」の冒頭部分が答えてくれます。

「幸せな家庭はどれも似通っているが不幸な家庭はそれぞれ違っている」

つまり、データに基づいて企業の衰退の枠組みを構築するのは、飛躍の枠組みを構築するよりも圧倒的に難しいということです。そんな中で、著者が試行錯誤をしながら強大な企業がいかに衰退するかを示す段階的な枠組みをデータから浮かび上がらせたのが本書です。

その枠組みは五段階で構成されます。以下にそれらを簡単に要約します。

■第一段階(成功から生まれる傲慢)

一度偉大な企業になると現実の厳しさから逃れられる。また、勢いがついているので経営者が判断を誤ったり、規律を失ってもしばらくは前進できる。そのため、人々が高慢になり、成功を続けるのは自分たちの当然の権利であるかのように考えるようになって、当初に成功をもたらした基礎的要因を見失うようになる。

■第二段階(規律なき拡大路線)

第一段階を経ることによって、規模を拡大し、成長率を高め、世間の評価を高めるなど、当初に成功をもたらした基礎的要因とは別の「成功」の指標のように見えるものすべてを貪欲に追及するようになる。それによって組織の成長が極端に早くなり、主要なポストに適切な人材を配置することができなくなって衰退の道を歩み始める。

■第三段階(リスクと問題の否認)

第二段階から第三段階に移行すると内部では警戒信号が積み重なってくるが、対外的には業績が十分に強いことから、不良なデータがあってもそれを小さく見せ、よいデータをことさら強調するようになる。その結果、事実に基づいた活発な議論が次第に行われなくなってくる。

■第四段階(一発逆転の追及)

第三段階に出てきた問題が積み重なって表面化し、企業の急激な衰退が誰の目にも明らかになる。この時のポイントは、経営者がどう対応するかである。一発逆転狙いの救済策(たとえば、大ヒット狙いの実績のない新製品の発売など)にすがろうとするのか、それとも当初に偉大さをもたらしてきた規律に戻ろうとするのかである。ここで、前者を選択するとそれは既に第四段階にあるということになる。

■第五段階(屈服と凡庸な企業への転落か消滅)

第四段階において一発逆転狙いの救済策に何度も頼ることで悪循環に陥ることになる。それによって財務力が衰え、士気が低下して、経営者は偉大な将来を築く望みをすべて放棄する。例えば、会社の身売りを決める場合もあり、衰退して凡庸な企業になる場合もある。極端な場合には企業が消滅する。

これらの枠組みを浮かび上がらせるのにつづけて、著者は次の指摘をしています。

「偉大な企業と良い企業の相違点は、困難にぶつからないことではない。一時は後退しても、壊滅的な破局にぶつかった時ですら、回復して以前より強くなる能力を持っていることである。偉大な企業は後退しても回復しうる。完全に打ちのめされて退場するのでない限り、常に希望がある。」

これらを見る限り、「過去の実績は将来の成功を保証するものではないことの理解」および「自ら進歩と改善を続けることへの強迫観念にも近いこだわりを持ち続けること」の二つが、「ビジョナリーカンパニー」であり続ける条件なのだと改めて感じます。

その意味で、シリーズ第三弾である本書は、前二作と比較をすれば多少見劣りするかもしれませんが、最終的にこの結論を印象付けるという目的を十分に担うだけの価値があると言えるのではないでしょうか。

 

 

 

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