有声音と無声音
2022年10月16日 CATEGORY - 日本人と英語
書籍紹介ブログにてご紹介した「英語リスニングの鬼100則」からテーマをいただいて書いていきたいと思います。
私は自ら主宰する「文法講座」における「発音記号講座」を「ほぼ完璧」な内容とするために厳密性をあえて省略しているとお伝えしつつも、前回の「英語『発音記号』の鬼50講」の関連ブログにおいて、好奇心旺盛な読者のために、その厳密性を深く掘り下げる記事をいくつか書きました。
その際にも書きたいと思っていた「テーマ」があったのですが、理解の「しやすさ」と「深さ」の狭間から最終的に書くことをためらってしまいました。
それが今回第一回目のテーマ「有声音と無声音の違い」に関する説明です。
まず、私は「文法講座」における発音記号の授業の中で、「有声音」と「無声音」の定義を次のようにしています。
「有声音」とは、声になる音、すなわち声帯を震わせて出す音であり、「無声音」とは声にならない音、すなわち声帯を震わせずに出す音だと。
そして、まずそのことを日本語の発音を利用して次のように解説します。
まず、ローマ字は日本語の発音を全て「発音記号」で表現したものだと伝えつつ、そのローマ字は「母音」のみ、もしくは「母音:aiueo」と「子音:kstnhmyrwgzdbp」の組み合わせでしか存在しないと。
その際に、母音は「有声音」で子音は「無声音」と説明し、それぞれを発音する時に自分ののどに手を当てて、声帯が震えるか震えないかを確認するように促します。
経験上、この確認時に受講者から疑問を呈されたことは一度もなく、この説明によって受講生の理解を端的にそして劇的に促すことができていると確信しています。
しかし、この私の説明は正確ではないどころか、実際には間違いを多分に含んでいるのです。
というのも、母音は「有声音」であるということに100%間違いはありませんが、子音は「無声音」だけではなく「有声音」であるものもあるからです。
実際には、「子音:kstnhmyrwgzdbp」のうちの「myrwgzdb」は有声音です。しかも、英語に至っては、それ以外にも「v ð z ʒ ŋ l 」が有声音、すなわち声帯を震わせる必要があるのです。
ただ、その震え具合が「母音」のそれに比べると非常に地味で、上記の私の説明のように端的で劇的な理解を促すことができないので、あくまでも日本語の発音の説明の時にだけそのような説明をするにとどめ、それ以降は「有声音と無声音」というキーワードに触れることはしないようにしています。
とはいえ、好奇心旺盛な受講者の期待を裏切っていることは事実ですので、本書における「有声音」と「無声音」の整理をしている箇所を読んだ時に、このブログでは触れておきたいと思い直しました。
その整理のポイントは、やはり「濁音」などに見られるような「振動」です。
k→g s→z t→d p→b f→v θ→ð ʃ→ʒ
また、それ以外の「m n ŋ r l j w」も非常に分かりにくいですが振動するとされています。
ところが私自身、頭で理解できても、喉を押さえることでは実際の振動を明確に体感することはできず、自分自身で体感できない以上、それを受講生に強制することに躊躇せざるを得ませんでした。
しかしながら、本書には私の躊躇を大いに払拭してくれる次のような指摘があったのです。
「手を喉ぼとけ付近にあてるほかに、耳の穴を指でふさいだり、耳を手で覆ったりしてもその違いを感じられます。」
自分自身で実際にやってみて「ああ、確かに!」と体感することができました。
これこそが今回私がようやくこのテーマで記事を書くことを決めた理由です。