日本の英語教育 #78
2014年9月30日 CATEGORY - おすすめ書籍紹介
【書籍名】 日本の英語教育
【著者】 山田雄一郎
【出版社】 岩波新書
【価格】 ¥740 + 税
【購入】 こちら
著者によれば、本書の目的は「日本の英語教育を振り返り、現状を分析し、未来への手がかりを求めること。そして、そのような歴史的視点に立って英語教育の刷新のために何が必要かを考えること。」だと言います。
今までこの書籍紹介ブログで紹介した多くの本は、この目的のために書かれたものです。そして、そのほとんどに、自分自身の英語教育に対する認識を新たにされる内容を見出すことができたことから、今回もこの本を手に取ることにしました。
本書ももちろんそうですが、多くの本が日本の英語教育の問題点を非常に鋭く指摘しています。
そして、その指摘は非常に的確です。
しかし、どの本の指摘もそれぞれ的確なのにもかかわらず、それらが問題の解決になかなか結び付かないというもどかしさがどうしても生じてしまうというのもまた事実です。
本書において、その指摘が問題解決にいつまでたっても結びつかない理由が、一言で言い表されていたのが非常に印象に残りました。
それは以下の言葉です。
「文科省に、教育委員会に、教師に、そして生徒に、まとめて言えば世の中全体に互いの責務を正面から受け止めるという潔さが生まれたならば日本の英語教育はどんなにかよくなるだろう。」
この言葉の中の「責務」という言葉を「本質」という言葉に読み替えるとよりその理由が明確になるような気がします。
そして、その理由を明確にしたうえで、どうすべきかについて次のような素晴らしい認識を示されています。
「『思い込み』による英語教育ではなく、真に生産的な英語教育をスタートしなければならない。」
先ほどの言葉の中の「責務」、および私が読み替えた「本質」とは、まさに「思い込み」を排した真に「政策的な」という意味です。
言語の習得は長い時間と地道な努力によってはじめて実現します。
現実の英語教育において、そのスタートが、往々にして「思い込み」によって誤魔化され、理念と計画に基づかずに制度化されているために、いつまでも長い時間と地道な努力が無駄になりつづけています。
この厳しい指摘を何とか制度を作る人たちにとどけなくてはならないと強く感じました。
文責:代表 秋山昌広