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ファクトフルネス

2020年9月25日 CATEGORY - 代表ブログ

皆さん、こんにちは。

最近になって「凶悪犯罪の数が増えてきた」と感じる人も多いかと思います。

しかし、実際のデータとして法務省「犯罪白書」を見てみると、1962年の刑法犯の検挙数が56万9866人だったのに対し、2010年は8万5846人となっています。

実際には、多くの人の感覚とは真逆で、85%も少なくなっていることに驚かされます。

この私たちの一般的な感覚と実際とのギャップというのは、この凶悪犯罪の発生数のみに見られるわけではなく、多くの「事実」について生じるということ、そしてそのギャップが生じる原因について詳細に書かれた「ファクトフルネス」という本を読みました。

本書の冒頭では、「世界の事実」に関する様々な「三択の質問」が投げかけられます。

そして、それらの質問に対する一定水準以上の知識層の正答率が、一つの質問を除いてすべてチンパンジーにランダムに選択させた結果よりも低く、しかもそれらはネガティブな方向で不正解だったという衝撃的な事実を明らかにしています。

つまりこの結果は、世界の多くの人々は「世界の事実」についてただ「知らない」だけでなく、「実際よりもより怖く、暴力的で、残酷な方向に」誤解しているということを示しているのです。

著者はこのことを「ドラマチックすぎる世界の見方」と表現し、この見方から私たち人間が解放されることは難しい、なぜなら脳の機能そのものに原因があるからだと言います。

本書における該当部分を以下に引用します。

「私たちの脳は極端な話に興味を持ちやすいし、極端な方に記憶が残りやすい構造になっています。しかしながら、この脳の特徴は真実を理解することには何の役にも立ちません。いつの世にも大金持ちや極貧の人がいて、最高の政権や最悪の政権が存在する。でも、両極端な例から有益な学びは得られない。大半の人はその中間にいて、両極端な例はほとんど当てはまらないからだ。」

そもそも、このような「極端性」というのは、私たち人間が長い間「狩猟採集動物」として、時間をかけて情報をふるいにかけ、理屈で判断しようとすれば、すぐに外敵や自然環境にやられてしまい普通の生活をおくることができない環境の中で、必要不可欠な「アラート」発生装置として機能したはずです。

しかし、現代社会ではそのような「アラート」は不要であるだけでなく、かえってそれが「事実に基づく世界の見方」を私たちから遠ざける機能になってしまったわけです。

ですから、私たちは物を考えたりするときには、あらかじめ私たちの脳にはこのような「ドラマチックすぎる世界の見方」の傾向があることを認識した上で、意識的に「事実に基づく世界の見方」を最大限に起動させる必要があるということです。

ただ、このような主張をすれば、のうてんきな「楽観主義者」と思われがちですが、それは違う、「悪い」と「良くなっている」が両立させて世界の今を理解することが重要だと著者は言います。

それにしても、本書において投げかけられる「質問」の答え合わせをしてみると、びっくりするほど「ドラマチックすぎる世界の見方」の傾向が明らかになってしまい、この意識の大切さが身に染みて分かるようになっています。

ちなみに、冒頭の質問の中で唯一チンパンジーの正答率を超えた質問というのが「2100年の地球の気温は 寒くなる・変わらない・暖かくなる のいずれか」という温暖化に関する質問だったそうです。

ということは、この問題に関してだけは、第一関門として「事実」としての認識はできているということになりますので、あとは逆に「アラート」発生装置を機能させて極端な行動による問題解決が必要なのかもしれません。

これが著者の言う「悪い」と「良くなっている」の両立ではないかと思います。

 

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