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印鑑社会の意味

2020年6月6日 CATEGORY - 代表ブログ

皆さん、こんにちは。

コロナ禍の影響からリモートワークが多くの企業において否応なく行われたことによって、従来「当たり前」だと思われていた様々な物事が実は「不要かもしれない」と思われ始めています。

具体例としては、物理的に立派な「本社」建物、みんなが同じ時間に出勤することから発生する「満員電車」などがあげられますが、その中でも最もその存在意義の説明が困難なものとして「印鑑」があげられます。

というのも、上記のように否応なく行われ始めたリモートワークがほとんどのケースでうまくいっているのですが、最後の「押印」のところでストップがかかり、ただ印鑑を押してもらうことだけのために出社するというような「ボトルネック」となってしまうからです。

つまり、日本社会における「印鑑」は、このようにたったそれだけのために、リモートワークという効率的なプロセスを台無しにしなければならないくらいに「迷惑」な存在だとされているわけです。

実際に、行政としても竹本IT担当大臣が2020年4月14日の記者会見で、「民・民の取引で支障になっているケースが多い」との認識を示し、「民間で話し合ってもらうしかない」と発言しました。

この発言から考えると、これは法律的な問題ではなく、私たちの「許容度」の問題だということになります。

実際に、この竹本大臣の発言に呼応して、GMO熊谷会長が翌4月15日に、「お客様手続きの印鑑を完全に廃止・契約は電子契約のみへ」をリリースし、印鑑廃止宣言をするに至りました。

そこで今回の記事では、そもそもなぜ日本社会はこれほどまでに「印鑑」を証明の手段として信頼するようになったのかについて考えてみたいと思います。

それについて調べましたら、うまくまとまっている記事を見つけましたのでこの記事から重要な部分を引用します。

まずは印鑑が重要となるケースとして最も一般的なものは「契約書」があげられますが、そもそも契約書自体の必要性について見てみましょう。

「契約は互いの意思表示があれば十分で、それは口約束でも構いません。それでも契約書を作成するのは主に『モメた時』と『適正な経理』のためにあります。契約をするときは良好でも、その後関係が悪くなることがあります。そういった時のために契約書を作成し合意した内容を記録しておきます。また、経理上も契約書があるほうが望ましいことがあります。たとえば、ある会社から100万円が振り込まれた時、それが借りたものなのか、売上なのか、有効な契約書があればすぐにわかります。このように、事実を客観的に確認できるように残すために契約書を作成します。」

それが分かったら次に、その契約書には「印鑑」が必要(IT担当大臣は「必要」ではないと言っているので)と多くの人が思っている理由についてです。

「契約書にハンコを押す理由ですが、これは民事訴訟法で『署名又は押印』があるときは真正に成立したものと推定する。という規定があり、この定めにのって、署名または押印をしている、というのが現実です。ちなみにハンコとはいってもただのスタンプ。盗んで押したり、印影から偽造したりすることもできます。それを許すと契約社会がぐちゃぐちゃになってしまうので、印鑑の偽造や不正利用は刑罰の対象とされています。」

ということは、印鑑はやはり「必要」なものではなく、民事訴訟法が「真正だと推定」してくれるので、証明する手間が省けるし、また偽造したりしたら罰が与えられるから抑止力も働いて「比較的」安全だからというのが理由に過ぎないと言えそうです。

私は、外国人(そもそも印鑑を持っていないケースがほとんど)との間の契約についてはお互いに自らのサインで行っていますが、日本においては法律が真正を「推定」してくれないので何らかのトラブルが起こった時には、訴えた方がその真正を立証する必要があるということになります。

ですので、やはり国内取引では、法律の「推定」がなされる方法が現実的となりますが、上記のGMOさんは「電子契約」への切り替えをすべての取引先に求めています。

この「電子契約」についてもその概要を引用します。

「ハンコである必要は全くありません。契約については、『電子署名法』という法律で電子署名があればいいとされています。ここでは、一般的な『クラウドサービス方式』について説明します。これは、合意したい書類をあらかじめクラウド上に保管しておき、両者がサービスにログインして『同意』のアクションをすることで、クラウドサービスが電子署名とタイムスタンプをその書類に添付してくれる。という仕組みです。通常、当事者の片方がクラウドサービスの利用者と契約をしていれば、相手方は費用を支払うこと無くクラウドサービスの利用者となって契約書に合意できるような仕組みになっています。コストがあまり掛からず、スピーディーに契約事務を進めることが出来ます。また、契約が終わったファイルをクラウド上で保管できるのも利点の一つです。」

ただし、不動産関係の契約、例えば「定期借地・建物賃貸借契約」「売買媒介契約」「重要事項説明」など一部の契約については制度として認められていないようです。

ただ、これらは不動産取引というかなり大きな契約のみに限定されているのでリモートワークの妨げにはほとんどならないと思います。

このように見てみると、日本における「印鑑」のボトルネックは、冒頭で述べた通り、私たちの「許容度」の問題だけだということがよく分かりました。

GMOの熊谷会長がその問題解決の先頭に立っていただいていることは、非常にありがたいことだと思います。

 

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