日本人と英語

規則動詞と不規則動詞

2021年7月17日 CATEGORY - 日本人と英語

書籍紹介ブログにてご紹介した「英文法の『なぜ』2」からテーマをいただいて書いていますが、第二回目の今回のテーマは「規則動詞と不規則動詞」です。

前回の記事で、古英語の「名詞」がいかに屈折の多い性質を持っていたのかを学びましたが、「動詞」も同じように古英語では活用の多いものでした。

しかしながら、英語は時代を追うごとに「単純化」の方向に導かれ、現代英語になると世界の言語の中でも最も屈折の少ない言語と言えるまでにシンプルになったわけです。

その屈折の少ないシステムの中でほんの少し、その屈折が残っているものとしてあげられるのが、動詞の過去形をつくる「不規則動詞」です。

中学生で初めて英語を習い始めた時、そのめんどくさい「不規則動詞」の存在にブーブー文句を言ったものですが、屈折が残っていると言っても、古英語に比べればそんなものは存在しないも同然の少なさなのだと知った今、当時の自分にそれがどれだけ幸せなことなのか言って聞かせてやりたいくらいです。

そんな現代英語の「規則動詞と不規則動詞」ですが、この「単純化」への具体的な流れを本書では紹介してくれていますので以下に該当部分を引用します。

「現代英語の動詞の過去形には語尾にedをつける規則動詞とsing /sang drive/ droveのように綴りを変化させる不規則変化があります。古英語では、それぞれ弱変化動詞(weak verb)と強変化動詞(strong verb)に分けられました。英語の単純化の流れは強変化動詞にもおよぶことになり、多くの強変化動詞(不規則動詞)が弱変化動詞(規則動詞)に形を変えました。古英語の強変化動詞で現代英語に残るものが195語あり、そのうちの2/3である129語が弱変化動詞(規則動詞)に形を変えています。例えば、現代英語の規則動詞であるclimb/ glide /help/ reach /step /walk/ wash/ workなどは元は強変化動詞(不規則動詞)でした。」

つまり、動詞も基本的には単純化する道をたどり、多くの強変化動詞(不規則動詞)が規則動詞に変わっていったわけで、現代英語においていまだに不規則動詞なのはよほど「しぶとい」強変化動詞だったということになります。

しかし、本書にはこの単純化の流れの中で、一度はその流れに流され、強変化動詞(不規則動詞)だったのもが規則動詞になったけれど、また揺り戻しをへて強変化動詞(不規則動詞)の形を現代英語でも保っている動詞を以下のように紹介しています。

「イギリスの『英語方言調査』によれば、47の州と地域のうち、35の州と地域でknowedという過去形が使われています。非標準英語ではknowは規則動詞に姿を変えたのです。実際、小説『ハックルベリー・フィンの冒険』にはこのknowedの他にも次のような過去形が現ます。

catched(caught)/waked(woke)/throwed(threw)/blowed(blew)/drawed(drew)

しかし、不思議なことにknewという形も2回だけ使われています。著者のマークトゥエインはこのknewをうっかり使ったわけではありません。この2回は庶民ではなく高貴の出と見せる仕掛けとして使われています。」

つまり、このような歴史を紐解くと、大きな流れとしては明らかに単純化すなわち「規則動詞」に収束する動きがあったが、いくつかを「しぶとく」残すことで、通常のコミュニケーション以外の「ニュアンス」を伝える機能を持たせていた地域も存在していたということです。

ですから、私たち日本人が英語をツールとして使用するという文脈においては、しぶとく残った「強変化動詞(不規則動詞)」が無理なく頭に浮かんでくるのであれば、「高貴=スマート」に見せるためにそれを使えばいいし、もしそれが出てこないのであれば、「う~ん、う~ん」と唸って時間を浪費してしまうのではなく、すかさず「ed」をつけてやっつけてしまうという姿勢が正解ということになります。

なんてったって、「単純化」こそが英語の大きな流れなのですから。

 

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