日本人と英語

フランス語によって意味を変えられた英単語

2023年11月5日 CATEGORY - 日本人と英語

書籍紹介ブログにてご紹介した「教養の語源英単語」からいくつかテーマをいただいて書いていきますが、第一回目のテーマは「フランス語によって意味を変えられた英単語」です。

このブログを読んでくださっている方であれば、「ノルマン・コンクエスト」つまり、フランスによる征服によってブリテン島の公式な言語がフランス語になり、英語に多くのフランス語の単語が流入したという事実をご存知かと思います。

ただ、今回ご紹介するのは、もともと英語にも存在する単語を残しつつ、フランス語の単語を英単語化することで、もともとの英語の単語の意味を変えてしまい、それぞれ意味の範囲を再構築し、全体の体系をも変化させるという非常に複雑なことがなされているという事実です。

以下にその具体例として二つ引用します。

まずは「deer(鹿)」について。

「アングロ・サクソン語のdeor(後のdeer)は、人間に対する『動物一般』を表す単語だったが、ノルマン征服以降、フランス語のanimalが『動物』の意味で使われるようになると、一時使われなくなる。このころ、イギリスの社会で狩猟の対象として最も一般的な動物が鹿であったため、やがてdeerが復活し、『鹿』の意味で使われるようになると、その時まで『鹿』の意味を持っていたheorot(後のhart)は、意味を特殊化して『雄鹿』の意味に変化した。」

続いて「worm(虫)」について。

「『虫』を表すwormはアングロ・サクソン語では、ヘビやトカゲなどの『爬虫類』が主な意味で、ウジやミミズなどの『虫』は二次的な意味でしかなかったが、14世紀後半にフランス語からreptile(爬虫類)が入ってくるとwormは『虫』の意味しか持たなくなる。」

やはり、ギリシア語は別格としても、学術、特に分類学に関しては特出したラテン語を祖先に持つフランス語の分類性には、英語としては「負けるが勝ち」と言ったところだったのかもしれません。

 

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