日本人と英語

なぜ「行ったことがある」は「I have been to」なのか

2021年2月27日 CATEGORY - 日本人と英語

書籍紹介ブログにてご紹介した「英語の歴史から考える英文法の『なぜ』」からテーマをいただいて書いていますが、第8回目の今回のテーマはあの「I have been to」の表現についてです。

「~に行ったことがある」という経験を表す現在完了形の表現は、「I have gone to」ではなく「I have been to」であるということはほとんどの学習者が知っていることでしょう。

しかし、それを現在形にした「I am to」という表現を目にすることがほとんどない中で突如現在完了形だけに現れるのかという疑問が、より一層大きなものになってしまっているのは私だけではないはずです。

そして、この疑問の厄介なことに、インターネットでこのような使用方法に関する由来や理由などを調べても、どうしても出てこないのです。

皆まるで、この表現の由来を突き止めることから逃げているかのように。

しかし、本書では軽くですが、しかし正面からこの問題に対して言及している部分がありましたので以下に引用します。

「『~に行ったことがある』という経験を表す現在完了形の表現をするには『I have gone to』ではなく『I have been to』を使うと教わります。しかし、『I have gone to』を『~に行ったことがある』という経験の意味に使わないと言い切るのは正確ではありません。その頻度は非常に少ないですが、アメリカでは経験の意味でも使われることがあるからです。それにしてもなぜ『~に行ったことがある』という意味を『I have been to』で表すのでしょうか。『オックスフォード英語辞典』はこのbeについて、元来、名詞または目的を表す不定詞を伴って、『~のため(しかるべき場所に)いた(存在)』という意味を表したものと説明しています。前置詞toの原義は『方向』ですが、『(~の方向に)ある』という場所の意味でも使われてきました。この原義から『I have been to』は『~に行ったことがある』という意味で慣用的な言い方となったようです。」

ここで、少しだけ補足をしてみたいと思います。

私としても、英語教育を生業とする者としてここから完全に逃げることはしたくなかったのでいろいろと調べてきました、その中でこの疑問の解消のヒントとなる可能性のある事実を一つだけ発見していました。

それは、辞書で前置詞「to」を調べた際、その意味の中に上記の引用の中にある「方向」以外に「到達」の意味があることでした。

このヒントを発見したときは、そこまでの確証を得られるには至りませんでしたが、本書の説明にこのヒントを補足として添えたとき、その確証はかなり高まった気がします。

今回、本書における上記の内容と合わせて、辞書にあった「到達」の意味を考えることで、非常にすんなりと受け止めることができました。

軽くとはいえど、誰もが逃げていたこの疑問に言及した本書は本当に素晴らしいと思います。

 

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