日本人と英語

小泉八雲の色の表現に関する解説

2021年5月28日 CATEGORY - 日本人と英語

今回より、書籍紹介ブログにてご紹介した「ラフカディオ・ハーンの英語教育」からテーマをいただいて書いていきたいと思いますが、第一回目のテーマは「色に関する表現」です。

外国語を学ぶメリットとして、母国語を客観的視点から見直すことができることがあげられます。

ラフカディオ・ハーンが講義の中で行った以下のような「色に関する表現」の解説はその好例だと思います。

「Japanese students make many mistakes at first about the use of words for colors. One reason is that certain Japanese words mean two colors. Colors are classed as DARK and LIGHT(or BRIGHT) The sky is bright blue. What is the color of the uniform of the students in winter? It is very dark blue. Grass is bright green. Blood is dark red. Burning charcoal is bright red.」

この英語のオリジナル解説には以下のような日本語訳がついています。

「日本人学生は、はじめは色にまつわる語彙の使用方法でよく間違えます。その原因の一つに日本語は一つの言葉で2つの色合いを示すことがあげられます。色はDARK とLIGHTまたはBRIGHTに分けられます。空は明るい青色です。冬用の学生服の色は何色ですか?紺色です。草は明るい緑色です。松の木は深緑色です。血液は濃い赤色です。燃え盛っている炭は明るい赤です。」

皆さん同様、私も実はこの日本語訳を読んでも何を意味しているのかなかなか理解することができませんでした。

というのも、「日本語は一つの言葉で2つの色合いを示すことがあげられます。」という言葉のあとに、紺色や緑色などという複数の「日本語」が書かれているためです。

しかし、何度か英語と日本語を行ったり来たりしているうちに、「Grass is bright green. 」という英語をそのまま現在の感覚で「草は明るい緑色です。」と単純に対訳してしまっていることに原因があるのではないかと気が付きました。

なぜなら、当時の日本人は「青い」という表現で、「空の青さ」も「(青)葉の緑さ」も表現していたはずで、いくら「Grass is bright green. 」を訳さなければならないからといって、ここで「緑」という表現を使用するべきではないからです。

当時の人たちは「Grass is bright green. 」を「草は明るい『青』色です。」という訳を当てはめるべきだったはずです。

さすがに、現在の私たちにとって「草は明るい『青』色です。」の表現は違和感がありますが、「青葉」や信号機の「青」などは今でも使用してしまっていますので、このような単純対訳がない方が素直にこのラフカディオ・ハーンの英語解説の指摘をすんなり受け入れることができるはずなのです。

とはいっても、ここでの目的は、本書の日本語訳に対するダメ出しをすることではなく、ラフカディオ・ハーンが「色に関する表現」の解説をもって、当時の日本人学生に対して母国語である日本語を客観的視点から見直させることに成功していることを指摘することです。

翻ってみて、私は、初めて「blue」や「green」という英語を学んだ時に、この色という非常に感覚的なものに対する表現の日本語と英語における「差」について気づかされた記憶はありません。

少なくとも私が受けた日本の英語教育においては、「母国語を客観的視点から見直す」チャンスを逸していたのに対し、このラフカディオ・ハーンはそのチャンスを学生に与えていたということが分かります。

 

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