日本人と英語

小学校英語を教えるのは誰か

2020年7月12日 CATEGORY - 日本人と英語

書籍紹介ブログにてご紹介した「小学校英語のジレンマ」からテーマをいただいて議論をしていますが、第五回目のテーマは、「誰が教えるのか」です。

その答えは全く英語教育をすることを前提として教師になったわけではない「学級担任」の先生だということなのですが、そうなると重要なのはその先生方に対する「研修」と授業の「準備時間」の確保ということになるのは当然の流れです。

しかしながら、本書を読むとその「当然の流れ」がきちんとできていない様なのです。

以下に、小学校教員の英語教科化に関わるそれぞれの状況について引用します。

まずは、「研修」について。

「研修への財政的・制度的バックアップは乏しい。まず、各都道府県等が推薦した数百人程度のリーダー教員を中央に集めて指導する。次にリーダー教員は地域に戻り、各小学校の中核教員に研修を施す。さらに、中核教員は小学校に戻り、同僚教員に校内研修を施す。文科省からすれば、コストが抑えられる妙案だろうが、このような伝言ゲームで研修効果があるのかは甚だ疑問である。また、個々の教員は通常業務から一時離れて研修に参加できるわけではなく、研修は既存の業務への上乗せである。」

この中で著者は、このような研修を「伝言ゲーム」と表現していましたが、まさにその通りでしょう。

こんなことで、実際の英語教育に当たる担当者を作り出すことができるのであれば、大学教育なんて全く必要のないと言えてしまいます。

次に、「授業準備」について。

「教員一人ひとりが新しい教育内容に対応するために捻出する自己研修・授業準備の時間も既存の業務に上乗せである。業務が増える分、人員を増員して一人当たりの業務時間を減らすという発想はなく、また、専科教員を増やすことで既存の教員の負担を減らすわけでもない。要するに、小学校教員は既存の業務に加え、新たに英語指導への対応を迫られることになっている。」

つまりは、「金は出さないが英語はやれ!」ということです。

ただ、この「金は出さないが英語はやれ!」という姿勢は行政だけのものではなく、世論、もっと言えば多くが「小学校英語」に賛成しているはずの保護者の姿勢でもあるようなのです。

「小学校への英語導入の賛否と教育予算増額への賛否の関係について調べた結果、小学校英語の置かれた厳しい状況について賛成者が理解しているならば、賛成であるほど教育予算の増額を支持し、それと引き換えであれば増税もやむを得ないと考える傾向がみられるはずだが、そうした傾向は全く見いだせなかった。つまり、小学校英語を支持していたとしても、増税によって教育予算を増やすことまでは必ずしも望んでいないのである。しかも、この調査は小中学生を子供に持つ保護者の意識調査の結果である。ということは一般世論に対しての結果は一層厳しくなるであろうことは想像に難くない。」

となれば、現場の教職員の苦労と混乱の深刻さも想像に難くありません。

 

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